Fiddler on the Roof in Yiddish 屋根の上のバイオリン弾き(イディッシュ語*による)

Fiddler on the Roof in Yiddish
屋根の上のバイオリン弾き(イディッシュ語*による)

オフ・ブロードウェイ
Fiddler on the Roof in Yiddish
屋根の上のバイオリン弾き(イディッシュ語*による)
Fiddler on the Roof in Yiddish 屋根の上のバイオリン弾き(イディッシュ語*による)

1964年のブロードウェイでの公演は、史上初の3,242回というロング・ランで幕を閉じ、その後世界中で上演された。1971年には映画化され、アカデミー賞を3部門で受賞。楽曲「Sunrise Sunset」「Match maker」「If I Were a Rich Man」は、芝居を観ない人にも身近な歌となっている。ブロードウェイでは5回リバイバルされてきた名作だが、昨年オフ・オフ・ブロードウェイ作品としてダウンタウンのユダヤ人遺産博物館でイディッシュ語で上演され、その後、オフとして移ってきた。元になった小説『牛乳屋テヴィエ』が、ユダヤ人ショレム・アレイヘムによりイディッシュ語で書かれたことを考えれば、この特殊な言語で演じられても奇異ではない。イディッシュ語については文末で。

あらすじ&コメント

ユダヤ人は古くから舞台芸術の長い歴史をもっていて、世界中で多くの実績を残してきた。ニューヨークに渡ってきたユダヤ人移民が当地の舞台芸術に寄与し、その基礎を作ったと言っても過言ではない。ブロードウェイの歴史を語るとき、彼らの存在は避けて通れない。

私にとっては舞台の袖に映し出される英語の字幕を読みながらの観劇だった。それでも深く感動した。イディッシュ語の向こうに何かがあったのだろう。1964年の初演をプロデュースしたハロルド・プリンスは、「この作品は『屋根の上のバイオリン弾き』を初めて観ている様な気持ちにさせてくれる」と語っていた。

舞台はいたってシンプル。最小限のセットで、ブロードウェイの華やかさや豪華さはない。それでも今までのどのリバイバルよりも心に響いた。それはまさにアメリカを含む世界中で、偏見にさらされてきたユダヤの人々が演じた、『屋根の上のバイオリン弾き』だったのだ。ユーモアを通して哀愁を表現し、迫害を受けても生き残っていくユダヤ民族の底力が、見事に描かれた作品となっていた。

あらすじはあまりにも有名なので、ここでは省く。演出はジョエル・グレイ。彼は俳優でもあり、MC役を演じた映画『キャバレー』でアカデミー助演男優賞を取っている。厚化粧をした背の低い彼が、シルクハットとタキシードでライザ・ミネリとデュエットする♪ Money Makes the World Go Round ♪を記憶に留めている人も多いだろう。イエンテ役のジャッキー・ホフマンは、コメディアンとして知られているが、劇中でもコミカルないい味を出している。

*イディッシュ語は、ナチスが台頭する前の時代に、ドイツ高地から東欧にかけて住んでいたアシュケナージ系ユダヤ人の言語。ドイツ語が基になりスラブ語・ヘブライ語が混合している。表記は伝統的にヘブライ文字で書かれる。ナチスの迫害を受けてアメリカへ移民してきたアシュケナージ系ユダヤ人は、ニューヨークで大きなコミュニティーを作り、イディッシュ語を使っていた。英語にも影響を与えており、私も英語になったイディッシュ語をいくつか知っている。今でも世界中に散らばったユダヤ人の多くはイディッシュ語を話し、イスラエルではヘブライ語の次に多く使われる言語となっている。
今度の劇場でも台詞で笑いを誘う場面で、同時に笑っている観客が少なくなかった。というよりも、意外に多かったので驚いた。
2/28/2019

Stage 42
422 W 42nd St

上演時間:3時間(休憩1回)

舞台セット:7
作詞作曲:10
振り付け:9
衣装:9
照明:7
総合:9

Lost Password