Lifespan of a Fact, The ライフスパン・オブ・ア・ファクト (上演終了)

Lifespan of a Fact, The
ライフスパン・オブ・ア・ファクト (上演終了)

演劇 ブロードウェイ
Lifespan of a Fact, The
ライフスパン・オブ・ア・ファクト (上演終了)
Lifespan of a Fact, The ライフスパン・オブ・ア・ファクト (上演終了)

2012年に出版され論議を醸し出した本『ザ・ライフスパン・オブ・ア・ファクト/The Lifespan of a Fact』の舞台化である。主人公のジム役は、ダニエル・ラドクリフ/Daniel Radcliffe。映画『ハリー・ポッター』シリーズのタイトルロールを演じた彼を知らない人はいないだろう。

あらすじ&コメント

全米で有名な雑誌にインターンとして務める若いジムは、編集長のエミリーから事実検証という業務を与えられる。エミリーのところに人気作家ジョンから自殺についての記事が送られてきたのだ。ジョンは、16歳の青年レヴィ・プレスリーによるラスベガスで起こった飛び降り自殺を通して、カジノ観光文化を批判した記事を書いたのだ。検証を始めてすぐにジムは気づく。その記事には多くの事実とは異なった事柄が含まれていた。ラスベガスにはストリップ・クラブが34店舗あると書かれているが、実際には31店舗しかなかった。中に「Bucket of Blood(血のバケツ)」というバーが出てくるが、実際には「Boston Saloon(ボストンのバー)」という酒場だった。記事に登場するもう一人の10代の女性も同じ晩に首を吊って自殺をしたとあるが、彼女もレヴィと同じ飛び降り自殺だった。徹底的に物事を詰めていく性格のジムはラスベガスに赴き、ジョンの家に泊まり込んでまでして、事実検証を始める。印刷の期日は迫ってきた。焦ったエミリーもラスベガスに飛んでくる。ジョンの記事を載せるかどうか、エミリーは翌朝には判断をしなければならなかった。3人は一つ部屋の中で「事実を述べる文章は、どこまで文章の流れを妥協できるか。創作の文章とはどこまで事実に寄り添うべきか」と夜通し論ずるのだった。

ジョンは「ロンドンの海岸線はどの位の長さだろうか。近づけば近づくほど、複雑な入り江が見えてきて、その海岸線はとめどなく長くなる。しかしどの尺が事実だというのだろう? その数字はどの距離で見るかによって変わる。作家がどこに距離を置くかによって事実は変わってくるもので、それが文章を書くということだ。僕は自殺の事実を書いているのではない。彼の自殺で湧き上がる気持ちの真実を語っているのだ。その心の存在は誰も否定できないはずだ」と説く。一方ジムはこう反論する。「今の時代にインターネットで事実検証をし、電話一本で嘘だとわかってしまう様な事を書いたら「嘘つき」と呼ばれても仕方がない。人の死を勝手に色付けて自分の主張に使っているだけだ」と。レフリーとして最終的な判断を迫られたエミリーの気持ちは揺れる。事実だけを書いていては人々の心は掴めない。が、どこまで妥協し、どこに線を引けば良いのか。朝日がさしてきたころ、ジムはこう口にする。「飛び降り自殺をしたのが本当にレビ・プレスリーだと言うことさえ確実じゃない。DNAなど生物学的鑑定が全くされていないのだ。ある左寄りの信憑性にかけた雑誌がそう言っただけで、それをジョンが事実と受け止めた。でも350メートルという高さから飛び降りた衝撃力は凄い筈だ。行方不明だった息子だと両親でさえも本当に見分けられたのだろうか。もしかしたら、今頃息子にかけていた生命保険が受け取っているのかもしれない」。エミリーは雑誌に載せる事を断念する。ジョンは「僕は両親のところに行って、長時間そこでレヴィの話を聴いた。僕は彼の死を両親と一緒に悲しんだのだ・・・」と呟くのだった。

作品の基となった同題の原作は、エッセイストのジョン・ダーガタが彼自身の経験を書き綴ったノンフィクション作品だ。 そこにはジョン・ダーガタが、実際に事実確認という業務を担ったジム・フィンガルと 「フィクションとノンフィクション」の定義と真実の扱い方について、如何に議論したかの記録が綴られている。 一方、ジョンのラスベガスで飛び降り自殺した青年についてのエッセイは、雑誌社「The Believer」の編集長エミリーがジョンの記事を載せないと決断した後も論議は交わされ続け、6年ほど経ってから、別のエンターテイメント色の強い雑誌に載った。

刺激になる論議が交わされるので全く飽きないが、台詞の量が半端でなく理屈が複雑なので、哲学や論理が好きな人にお薦めする。

エミリー役はブロードウェイの大御所チェリー・ジョーンズ/Cherry Jones。トニー賞で演劇主演女優賞を2回受賞している。ダニエル・ラドクリフはトニー賞受賞暦はないが、『ハリー・ポッター』のシリーズ後、多くの舞台に出演しており、中でもミュージカル『努力しないで出世する方法』2011年のブロードウェイでのリバイバル版では素晴らしい歌と演技とダンスを披露していて、今後も目が離せない俳優の一人だ。ジョン役はボビー・カナヴェイル/Bobby Cannavale。テレビで多く活躍しているが、事実や詳細を詰める性格のジム役とは対照的な、 エッセイストらしいズボラさと暖かい雰囲気を上手く表現している。

作品の基となった同題の原作は、エッセイストのジョン・ダーガタが彼自身の経験を書き綴ったノンフィクション作品だ。 そこにはジョン・ダーガタが、実際に事実確認という業務を担ったジム・フィンガルと 「フィクションとノンフィクション」の定義と真実の扱い方について、如何に議論したかの記録が綴られている。 一方、ジョンのラスベガスで飛び降り自殺した青年についてのエッセイは、雑誌社「The Believer」の編集長エミリーがジョンの記事を載せないと決断した後も論議は交わされ続け、6年ほど経ってから、別のエンターテイメント色の強い雑誌に載った。

刺激になる論議が交わされるので全く飽きないが、台詞の量が半端でなく理屈が複雑なので、哲学や論理が好きな人にお薦めする。

エミリー役はブロードウェイの大御所チェリー・ジョーンズ/Cherry Jones。トニー賞で演劇主演女優賞を2回受賞している。ダニエル・ラドクリフはトニー賞受賞暦はないが、『ハリー・ポッター』のシリーズ後、多くの舞台に出演しており、中でもミュージカル『努力しないで出世する方法』2011年のブロードウェイでのリバイバル版では素晴らしい歌と演技とダンスを披露していて、今後も目が離せない俳優の一人だ。ジョン役はボビー・カナヴェイル/Bobby Cannavale。テレビで多く活躍しているが、ジム役とは対照的な、芸術家っぽい大らかさと温かさの混ざった雰囲気を上手く表現している。
12/27/2019

千秋楽:1月13日2019年

Belasco Theater
Studio 54
254 W. 54th St.
上演時間: 1時間35分

NY Times 8
Wall Street Journal 9
Variety  8

舞台セット:8
衣装:8
照明:8
ストーリー:8
キャスティング:8
総合:8

Photograph by Peter Cunningham, 2018

Photograph by Peter Cunningham, 2018

Photograph by Peter Cunningham, 2018

Photograph by Peter Cunningham, 2018

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