ザ・チルドレン The Children

ザ・チルドレン The Children

ブロードウェイ
ザ・チルドレン The Children
ザ・チルドレン The Children

緞帳に海の波の映像が効果的に投影され、照明が入ると、傾いた居間の装置の中央で血が顔面から胸まで流れ出ている中年の女性が立っているという衝撃的な場面から始まる。閉演予定:2018年2月4日

あらすじ&コメント

舞台は英国の田舎。そこを襲った地震と津波によって原子力発電所の緊急電源が停止し、放射線物質が放出されてしまう。ロビンとヘーゼル夫婦は、放射能汚染の心配のない地区にある簡素な別荘に逃げて住んでいるが、水道の水は飲めず、計画停電が絶えない。夫婦には子供たちがいるようだが、すっかり独立していて彼らが両親に会いに来ることもない。近くに住む人もまばらで、二人きりで不便で細々とした生活を送っている夫婦だったが、二人とも若い頃は事故にあった原子力発電所で一緒に働いたエンジニアだった。そこに知らせもなく、昔同じ町で育ち、同じく原子力発電所で働いていたローズが現れる。 40年ぶりの突然の訪問に驚いたヘーゼルが、誤ってローズに暴力をふるってしまい鼻血を出させてしまったとういうのが最初の場面だ。

二人の女性の間に緊張感が流れている中、ヘーゼルの夫ロビンが放射能汚染区域内にある自分たちの牧場に取り残された牛の世話をし終わって戻ってくる。ヘーゼルが訪問者のローズと夫のロビンを置いて部屋を出ると、ロビンはローズの乳房に手を伸ばす。二人が以前は恋人同士で、その関係が結婚後も数年間は続いていたことが、だんだんとわかってくる。

何故ローズが昔の愛人のロビンに会いに来たのだろうかと観客が気になる頃合いに、ストーリーは急展開する。 実はローザは、危険な原子力発電所の大事故の修理を、これから老年を迎える自分たちが行うべきだとボランティアを募っていたのだ。そこで、原子力発電所で昔一緒に働いていたロビンとヘーゼルを誘いに来たのだった。事故後の原子力発電所での修理に携わることは自殺行為と同じだったが、未来のある若者のエンジニア達にこれ以上は現場を任せるべきではないと説いた。そして最後には、3人は共に原子力発電所に向かうことを決断する。

男女関係の縺れ合いと、原発事故の恐怖を描いている芝居だが、それぞれのストーリーは別々に進んでいて、二つのストーリーが混ざり合う場所はなく、二つの異なる曲を同時に聴かされているようなちぐはぐ感が残る。あえて言えば、ヘーゼルが可愛がっていた牧場の牛達は被爆して全滅していたのにも関わらず、彼女の気持ちを傷つけまいと「牛が無事なので世話に行く」と毎日汚染された牧場に足を運んだ夫のロビンが、多量に被爆してもう助からない身であるという部分くらいだ。聞くところによると、元々男女関係をテーマに書いていたところに、原子力発電所の事故というストーリーを追加することになったそうで、このテーマ過多になっている理由があった様だ。地震、津波、原子力発電事故を経験した国の一人として見ると、男女の愛や恋とのごった雑ぜ感に多少の苛立ちをおぼえなくもない。しかし、ロンドンのウェスト・エンドから初めてブロードウェイにやってきたこの作品、冒頭から緊張感がぶれずに続く劇作家ルーシー・カークウッドの腕前は凄いし、英国の舞台俳優の演技は、シェイクスピアの時代からの歴史がものを言うのか、地味なのに素晴らしい。閉演予定:2018年2月4日

メディア評

NY Times: 9
Wall Street Jornals : 7
Variety : 7

Samuel J. Friedman Theater
261 W. 47th St.

公演時間:1時間50分(休憩なし)

舞台セット ★★★★★
衣装 ★★★★☆
照明 ★★★★★
総合 ★★★★☆

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