ミュージカル『ヘアスプレー』の初演でティーンエイジャーの役として共演した女優3人による女子会のようなステージが、オフ・ブロードウェイで上演中の『ママ、アイム・ア・ビッグ・ガール・ナウ』。劇中で歌われる楽曲名をタイトルに冠したこの作品で久々に同じ舞台に立つ3人が自ら脚本と演出を担い、歌やトークで当時を振り返り、その後のキャリアや友好関係を楽しく紐解いていく内容となっている。
人気リアリティ番組『ル・ポールのドラァグ・レース』は、ドラァグクイーンの存在とその文化を幅広く知らしめた。同番組でその名を馳せたアラスカ・サンダーファックが作詞・作曲・脚本・主演を担うのが、この秋にオフ・ブロードウェイで開幕した『ドラァグ:ザ・ミュージカル』。あのライザ・ミネリがプロデューサーのひとりでもある新作ミュージカルだ。 パンデミック直後にコンセプト・アルバムをリリース、その後のワークショップを経て、今回のオフ・ブロードウェイ初演に至った。冒頭はライザ・ミネリが吹き込んだイントロの録音が流れ物語が始まる。
アジア系アメリカ人のアイデンティティと人種問題に切り込む大胆な姿勢が高い評価を受け、2008年にピューリッツァー賞の最終候補となった戯曲のリバイバルである。ニューヨーク・パブリック・シアターでオフ・ブロードウェイ初上演され、その後各地を廻ってようやくブロードウェイにやって来た。
ブロードウェイでは7年ぶりで、2度目のリバイバルとなるアンドリュー・ロイド=ウェバー作曲の『サンセット大通り』。今回は、ウエストエンドで上演され、2024年のローレンス・オリビエ賞でリバイバル作品賞も含め同年最多の7部門を受賞したプロダクションの引っ越し公演となる。作品を解体し新たな解釈を加えながら再構築していくことで有名なジェイミー・ロイドの斬新な演出によるリバイバルは、ブロードウェイでも1週間の興行収入が150万ドル超となる大ヒット作となった。
異なった環境で生活してきた全く違う性格の二人の中年女性が、オハイオ州の田舎でルームメートとなるところから物語は始まる。彼らの似ているのは、今までの生き方を変えたいと願っているところだ。二人の人生が、そのとある一軒家で交差し、やがて離れていく。その居間で繰りひろげられる大女優二人の演技を、1時間40分間、じっくりと観ていただきたい。
大ヒットした映画『バービー』でタイトルロールを演じたハリウッド女優のマーゴット・ロビーが惚れ込み、プロデューサーとして名乗りを挙げたことで初演が実現したのがミュージカル『ビッグ・ゲイ・ジャンボリー』。“ゲイの大祭典”などと訳せるタイトルからも自ずと察しがつくように、徹底して笑いを提供することに拘ったオフ・ブロードウェイで注目されている新作だ。
2024年の夏のニューヨーク演劇界でチケット入手に困難を極めたのが、オフ・ブロードウェイで上演されたミュージカル『キャッツ:ジェリクル舞踏会』。猫たちが都会のゴミ捨て場に集い、天上へ昇ることを許される1匹を選ぶという内容のお馴染みのミュージカル『キャッツ』を、新たな視点で見つめ直したリバイバルだ。
未だ10代だったS.E.ヒントンが、自身の住むオクラホマ州タルサを舞台に書いた小説 『アウトサイダー』は、当時同世代の若者の間で絶大な支持を得た。かれこれ60年ほど前の話だ。その後1983年にF・コッポラ監督で映画化され、後に有名になる多くの若手俳優がそこでデビューを果たした。そしてこの4月、アンジェリーナ・ジョリーがエグゼクティブ・プロデューサーとなって、ブロードウェイでオープンした。どうやら彼女の15歳になる娘がサンディエゴの大学内でこの作品の試験公演を観て、アンジーに勧めたらしい。このS.E. ヒントンの小説を元とした作品は、若者たちの大人社会に対するいらだちと反発や、それを解消できずに相手ばかりか自分の心や体も傷つけてしまう若者達を描いている。彼等が直面する様々な問題を描くアメリカ青春文学の流れを汲む作品の一つだ。
ヨーロッパのファシズムが拡大し、世界が混沌としていった時代を生き抜いた女性肖像画家の一生を描いたミュージカル。その主人公、タマラ・ド・レンピッカの名は知られていない。しかしその絵には見覚えがある筈。ロシアで何一つ不自由なく生活していたレンピッカはある時、突然難民となる。しかし貧しい暮らしの中で創作活動を始め、やがて芸術界のスターへと昇りつめていく。ユダヤ系ポーランド人の彼女が描く数々の肖像画は、浮き沈みを繰り返しながら現在も人気を博している。本ミュージカルのレンピッカは、『ウィキッド』のエルファバ役や『レント』のモーリン・ジョンソン役で絶賛された、ブロードウェイでは未だそんな歳ではないが重鎮と呼びたくなる存在のエデン・エスピノーサが演じている。他方、彼女が心を寄せる娼婦をアンバー・アイマンが。レンピッカのパトロンの妻をベス・レベルが演じる。彼女達の美しいソロの数々は、きっと感動を呼び起こす...[Read More]
2023年~2024年シーズン後半のオフ・ブロードウェイでサプライズな大ヒットとなったのが、台詞が一切ないダンス・ミュージカル『イリノイズ』。シンガーソングライターのスフィアン・スティーヴンスが2005年に発表した、イリノイ州に焦点を当てたコンセプト・アルバム(邦題:「イリノイ」)に収録された楽曲を下敷きに、それらに合わせて物語を創作したジュークボックス・ミュージカルとなる。
ベストセラーとなった歴史長編小説「WATER FOR ELEPHANTS(邦題:サーカス象に水を)」の新作ミュージカルがブロードウェイで始まった。サラ・グルーエンによるこの小説は2006年に出版され、2011年には映画「恋人たちのパレード」にもなっている。時代は1931年、世界大恐慌の真っ最中。事故で両親を亡くして無一文となった青年ジェイコブが、行き先も定まらないまま列車に飛び乗り、そこで出会ったサーカスのメンバーと新たな人生を歩み始める。演出は昨年、『キンバリー・アキンボ』〔https://broadwaysquare.jp/kimberly-akimbo-2/〕でトニー/ミュージカル作品賞のトロフィーを手にしたジェシカ・ストーンだ。ちなみにこの作品の制作費は記録破の2500万ドルかかっていると言う。
19世紀末から20世紀初頭にかけて実在した強盗エルマー・マッカーディのわずか30年ほどの一生と、死後ミイラとなって過ごした66年間が描かれている。舞台は、ステージの3分の1ほどの大きさの台に7人のバンドマンが乗り込み、フォーク・ロックを演奏する。作曲家デビット・ヤズベック、劇作家イタマール・モーゼス、演出家デビッド・クローマーという最強チームが、トニー賞を総なめにした2018年の『The Band’s Visit』に続いて再結集して送り出す作品だ。ナレーションを担う男優ジェブ・ブラウンは、ボーカルを担当したうえで強盗団のボスにも扮する。他のキャストもステージでマイクを握って歌ったり踊ったり。新たな趣向で面白い。全体がコメディーに溢れていながら哀愁にも満ちた秀作。