Broadway Square

The Outsiders  アウトサイダー

未だ10代だったS.E.ヒントンが、自身の住むオクラホマ州タルサを舞台に書いた小説 『アウトサイダー』は、当時同世代の若者の間で絶大な支持を得た。かれこれ60年ほど前の話だ。その後1983年にF・コッポラ監督で映画化され、後に有名になる多くの若手俳優がそこでデビューを果たした。そしてこの4月、アンジェリーナ・ジョリーがエグゼクティブ・プロデューサーとなって、ブロードウェイでオープンした。どうやら彼女の15歳になる娘がサンディエゴの大学内でこの作品の試験公演を観て、アンジーに勧めたらしい。このS.E. ヒントンの小説を元とした作品は、若者たちの大人社会に対するいらだちと反発や、それを解消できずに相手ばかりか自分の心や体も傷つけてしまう若者達を描いている。彼等が直面する様々な問題を描くアメリカ青春文学の流れを汲む作品の一つだ。

Lempicka レンピッカ

ヨーロッパのファシズムが拡大し、世界が混沌としていった時代を生き抜いた女性肖像画家の一生を描いたミュージカル。その主人公、タマラ・ド・レンピッカの名は知られていない。しかしその絵には見覚えがある筈。ロシアで何一つ不自由なく生活していたレンピッカはある時、突然難民となる。しかし貧しい暮らしの中で創作活動を始め、やがて芸術界のスターへと昇りつめていく。ユダヤ系ポーランド人の彼女が描く数々の肖像画は、浮き沈みを繰り返しながら現在も人気を博している。本ミュージカルのレンピッカは、『ウィキッド』のエルファバ役や『レント』のモーリン・ジョンソン役で絶賛された、ブロードウェイでは未だそんな歳ではないが重鎮と呼びたくなる存在のエデン・エスピノーサが演じている。他方、彼女が心を寄せる娼婦をアンバー・アイマンが。レンピッカのパトロンの妻をベス・レベルが演じる。彼女達の美しいソロの数々は、きっと感動を呼び起こす...[Read More]

Illinoise イリノイズ/イリノイ

2023年~2024年シーズン後半のオフ・ブロードウェイでサプライズな大ヒットとなったのが、台詞が一切ないダンス・ミュージカル『イリノイズ』。シンガーソングライターのスフィアン・スティーヴンスが2005年に発表した、イリノイ州に焦点を当てたコンセプト・アルバム(邦題:「イリノイ」)に収録された楽曲を下敷きに、それらに合わせて物語を創作したジュークボックス・ミュージカルとなる。

Water for Elephants直訳:象達のための水

ベストセラーとなった歴史長編小説「WATER FOR ELEPHANTS(邦題:サーカス象に水を)」の新作ミュージカルがブロードウェイで始まった。サラ・グルーエンによるこの小説は2006年に出版され、2011年には映画「恋人たちのパレード」にもなっている。時代は1931年、世界大恐慌の真っ最中。事故で両親を亡くして無一文となった青年ジェイコブが、行き先も定まらないまま列車に飛び乗り、そこで出会ったサーカスのメンバーと新たな人生を歩み始める。演出は昨年、『キンバリー・アキンボ』〔https://broadwaysquare.jp/kimberly-akimbo-2/〕でトニー/ミュージカル作品賞のトロフィーを手にしたジェシカ・ストーンだ。ちなみにこの作品の制作費は記録破の2500万ドルかかっていると言う。

Dead Outlaw デッド・アウトロー

19世紀末から20世紀初頭にかけて実在した強盗エルマー・マッカーディのわずか30年ほどの一生と、死後ミイラとなって過ごした66年間が描かれている。舞台は、ステージの3分の1ほどの大きさの台に7人のバンドマンが乗り込み、フォーク・ロックを演奏する。作曲家デビット・ヤズベック、劇作家イタマール・モーゼス、演出家デビッド・クローマーという最強チームが、トニー賞を総なめにした2018年の『The Band’s Visit』に続いて再結集して送り出す作品だ。ナレーションを担う男優ジェブ・ブラウンは、ボーカルを担当したうえで強盗団のボスにも扮する。他のキャストもステージでマイクを握って歌ったり踊ったり。新たな趣向で面白い。全体がコメディーに溢れていながら哀愁にも満ちた秀作。

An Enemy of the People 民衆の敵

戯曲『人形の家』で有名なノルウェーの作家ヘンリック・イプセンの同名作品をエイミー・ヘルツォークが脚色したリバイバルとなる。原作は1883年にノルウェーで初演されて以来、世界中で何度も上演され、ブロードウェイでは11回目だ。今回は、テレビドラマの大ヒットシリーズ『メディア王 〜華麗なる一族〜』の主役を4シーズン務めて世界的名声を博したジェレミー・ストロングが主演している。ノルウェーの辺境にある小さな町の医師が、倫理感の為に心ならずもそこの町民と戦うことになる姿を描いている。演出は、エイミー・ヘルツォークの夫であり、トニー賞受賞者でもあるサム・ゴールドが担っている。 心の深淵に響く、見応えのある作品だ。

Brooklyn Laundryブルックリン・ランドリー

ピューリッツァー賞とトニー賞を受賞しているニューヨーク生まれの劇作家、ジョン・パトリック・シャンリーが脚本と演出を担った悲喜劇『ブルックリン・ランドリー』。異性運がなかった男女が、人生の大波に呑まれながらも様々な絆を大切にする様子を、丁寧に描いている。主演女優は『サタデー・ナイト・ライブ』で10年以上、いろいろな役をこなしてきたセシリー・ストロングで、今回は簡素で二面性のないフラン役を、好感の持てる演技で魅せてくれる。相手役のオーウェンは、ピューリッツァー賞を受賞した『Cost of Living』(https://broadwaysquare.jp/appropriate/)で主演したデヴィッド・ザヤス。彼はこの作品でトニー賞にノミネートされている。粗野でありながら温かみが感じられる男優で、人との触れ合いを渇望しながらも楽観的でいられる、寂しい中年男を演じると天下逸品だ。

Doubt: A Parable 疑惑:聖書における道徳的訓話

ピューリッツァー賞とトニー賞を受賞した『ダウト』が、20年ぶりにブロードウェイに帰って来た。『ダウト』は劇作家ジョン・パトリック・シャンリーの名作。2008年にメリル・ストリープ主演で映画化され、アカデミー賞最優秀脚色賞を含めた5部門でノミネートされている。1964年、ニューヨーク市ブロンクスの労働者階級が多い地域のカトリック校が舞台。そこの修道女である校長と、併設する教会の神父が描かれる。厳格な校長は、信者や生徒にフレンドリーな神父を児童性愛者ではないかと疑い、何とかしなければならないと決意する。

Days of Wine and Roses 酒とバラの日々

主演女優ケリー・オハラは、ミュージカル『王様と私』でトニー賞を受賞。2019年には来日も果している。その彼女が今回はアル中の女を演じるというので、今NYCでは、この話題で盛り上がっている。演題の「Days of Wine and Roses」は、ジャズのスタンダードナンバーとして有名だが、元は1958年、 J.P.ミラーの脚本によるテレビドラマで、その後1962年にジャック・レモンが主演して映画化。大ヒットした。今回のミュージカルは、このテレビドラマと映画を組み合わせてミュージカルに仕立てられている。

The Connectorザ・コネクター

コンラッド編集長は1995年、ライターとしてこの会社に加わって以来、約30年に渡って著名な人気雑誌ザ・コネクターの発刊に情熱を注いできた。ところが50年という歴史を持つコネクター社は、ちかごろ複合企業に買収され、利益増進を厳しく求められるようになっていた。そんな時に面接に来た名門校出身のイーサンを、編集長のコンラッドは大いに気に入り採用する。 働き始めたイーサンは、早速興味深い人物を見つけ出してきては次々に興味深い記事を書くのだった。そのおかげでザ・コネクターの購読者は増え、会社も順調に利益を上げていく。採用決定したコンラッドの眼力が証明されたように映る中、コンラッドはイーサンに政治的な記事にもチャレンジするよう勧め、イーサンもそれに応えるのだった。だがその記事の見事さに疑問を抱くメンバーもいた。それは同僚であり彼のガールフレンドでもあるロビンと、記事の裏取りを仕事としていたメリエルだっ...[Read More]

Jonahヨナ

ニューヨーク、ブルックリンの劇作家レイチェル・ボンズによる新作。犯罪の温床の様な都市デトロイト生まれの主人公アナを中心に、3人の男達が絡んで話が展開する。舞台設定はただ一つ。彼女の部屋だが、それは一時期に留まらない。幼少期から学生時代を経て、ひとり立ちするまでの複数の彼女の世界が、ベッドと机のある部屋で描かれる。しかも回想して過去に行ったり現代に戻ったり、が繰り返される。最初は学校で出会ったヨナと仲良しになる部屋だ。次はもっと若い頃の自宅で、虐待する父親から自分を守ってくれる義理の兄と過ごす部屋となる。三つめは執筆家となった彼女が小説を書く為の仮宿で、そこに隣人の男性が訪れてくる。時間が過去と現在を行ったり来たりする中、観客は次第にこれが彼女の心の中にある部屋であり、現実にあった過去の話だったり、今の事だったり、時には彼女の想像だということが判ってくる。同時にどこまでが現実でどこからが空想...[Read More]

Appropriate アプロプリエイト

脚本家のブランデン・ジェイコブス-ジェンキンス(39歳)は、ブルックリンの黒人の劇作家/プロデューサーで、ピューリッツァー賞演劇部門を受賞している。また2014年にオフで上演されたこの『Appropriate 』と、別の作品 『An Octoroon 』で、オビー賞(オフやオフオフ・ブロードウェイを対象とする賞で、それらでの最高の栄誉とされている。)の最優秀新人アメリカ演劇賞も受賞している。『アプロプリエイト』はミステリーに満ちながらも、コミカルな会話によって、その緊張をほぐしながら進む。しかし軽妙な会話は一筋たりとも希望の光を見せてはくれず、笑いの中で徐々に8人の家族の関係と故父親の秘密が暴かれていく様子は絶妙で、150分はあっという間だ。

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