Cellino v. Barnesセリーノ対バーンズ

Cellino v. Barnes
セリーノ対バーンズ

オフ・ブロードウェイ ミュージカル
Cellino v. Barnes
セリーノ対バーンズ
Cellino v. Barnesセリーノ対バーンズ

ニューヨークで二人の弁護士が立ち上げた個人傷害法律事務所が、膨大な利益を出していたにもかかわらず、たった20年後には完全な破局に至るというミュージカル・コメディーだ。この二人は実在した弁護士で、2000年の始めに自らジングルを作り、さらにそれに出演もした。そのテレビコマーシャルは、電話番号を歌詞の中に含め、そのノリの良さで大きな話題となった。おかげで彼らの傷害法律事務所はアメリカ人で知らない人がいないほどの知名度を得て、顧客も急増した。しかし、蜜月が過ぎ、一旦小さい争いが始まると、二人は子供のように感情的になって、その喧嘩は終わりを知らなかった。最終的に、2017年にセリーノが会社の解散を求める訴訟を起こしたことで、その二人の滑稽かつ壮絶な争いが公に知られるようになった。その始まりから終わりまでが、テンポよくユーモアたっぷりに描かれている。

あらすじ&コメント

彼らはビジネスに於いて倫理的に疑わしい手段も使ったとも言われているが、利益は急上昇していった。舞台は彼らの出会いから始まる。セリーノは父親の法律事務所から疎まれている出来の悪い弁護士だったが、そこに面接に来たバーンズと出会い意気投合して、一緒に別の事務所を立ち上げることになる。バーンズはビジネス面を、セリーノはマーケティングを担当し、最初は順調だった。しかし、次第に幼稚な性格がぶつかり合うようになり、そのうち皮肉たっぷりなメッセージで、相手をあざ笑う争いが激化してく。

演出はアレックス・ワイズと、ブロードウェイ・ミュージカル『ロック・オブ・エイジズ』でフランツ役を務めたウェズリー・テイラーが担当している。舞台は、所狭しと机や引き出しが置かれ、ファイル箱が左右に積み上がっている。そんな中、エリック・ウィリアム・モリス(セリーノ役)とノア・ワイスバーグ(バーンズ役)の二人が、会話、電話、歌、踊りを絶え間なくこなしている。エリックはブロードウェイの『キングコング』、『コラムボーイ』、『マンマ・ミア!』などに出演しており、踊りも秀でている。ワイスバーグはやや演技が大袈裟だが、『サウス・パシフィック(南太平洋)』、『エンロン』、『エルフ』、『リーガリー・ブロンド』などにも出演している経験豊かな俳優だ。セリフや歌詞は大いに笑いを誘っているが、テンポの速い展開がずっと続くため、90分という短い上演時間にもかかわらず、少し退屈に感じる場面もあるかもしれない。バラードを挿入するなどして、キャラクターの内面にもう一歩踏み込んだ描写があれば、より良い作品になっただろう。

この法律家二人のビジネスについて、詳細には語られていない。が、実際の「セリーノ&スティーブ」傷害法律事務所は、最盛期には約50人の弁護士と250人の従業員を抱え、ニューヨーク州全域にオフィスを構え、ロサンゼルスにも支店を持っていた。2017年には、既に解散を巡る法廷闘争の最中だったにもかかわらず、それぞれ700万ドルの利益配分を受け取ったほどだ。2020年の正式な会社崩壊後は、それぞれ独立して法律事務所を立ち上げたが、同年バーンズは自ら操縦していたプライベート・ジェットの事故で亡くなる。仲違いの理由は多々あるようだが、特に目立っていたのは、内部間での顧客の取り合いや肉親を優遇して雇用することによって起こるオフィス内の人間関係の歪みだったようだ。友好的に早いうちに平和に離縁していたらもっと利益を守れただろうが、お互い頑固に相手を批判し続けたために妥協点が見つからず、最後には裁判官の審判による解散処理の判決が下された。

日本では知られていないが、アメリカでは個人傷害法律事務所と言うと、「悪知恵が働いて、汚い手を使う法律家」という印象がある。この二人もその例に漏れず、結局お互いの手の内を信用することができなかったのだろう。(2/21/2025)

The Cell Theatre
338 W 23rd St, New York, NY 10011
上演時間:80分(休憩なし)
公演期間:2025年、3月19日〜4月19日

舞台セット:7
作詞作曲:8
振り付け:7
衣装:7
照明:7
総合:7
@ Marc J. Franklin
@ Marc J. Franklin
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