Kinky Boots キンキー・ブーツ

Kinky Boots
キンキー・ブーツ

オフ・ブロードウェイ ミュージカル
Kinky Boots
キンキー・ブーツ
Kinky Boots キンキー・ブーツ

2013年にベスト・ミュージカルも含めて6部門で受賞したミュージカル『キンキー・ブーツ』が、8月にオフ・ブロードウェイでスタートした。シンディー・ローパーの作詞作曲、ハーヴェイ・ファイアスタインの脚本になる。オンでは6年間約2500回以上の公演を続けたうえ世界ツアーも行い、日本では故三浦春馬がローラ役を演じて評判になった大作品だ。オンでは何回も観ていたので懐かしく、また今回、ロンドンのウェストエンドでローラ役を演じて高評価だったカルム・フランシスがそのまま主演とのことで、期待に胸を膨らませて足を運んだ。

あらすじ&コメント

舞台が始まり、設定されたキャバレーの壇上にスポットライトをあびて登場したカルム・フランシスは、スラッと背が高く、これまで舞台やビデオで観てきたどのローラよりも美しくてドキッとした。真っ赤なドレスに高いハイヒール。切れのある踊りにハリのある声。それだけでワクワクさせられる。

女優については「華がある」という形容詞がよく使われるが、男性である彼の華には圧倒される。実は今回、最初に観に行った時は彼が休みで、代役のニック・ドレークがローラを演じていたのだが、初々しく彼が歌う「Not My Father’s Son (僕は父の理想の息子じゃなかった)」にはジーンときた。謙虚さが滲み出る彼が、傷ついた人間を演じるとはまる。しかし残念ながらカルムのようなオーラはない。正直なところカルムは、オン・ブロードウェイのオリジナルでローラ役を演じてトニー賞まで受けたビリー・ポーターよりも素晴らしい。劇中、父親が入っているホスピスで歌うカルムのソロも圧巻。ちなみにビリー・ポーターは、その後テレビや映画でも活躍し、今年2022年のトニー賞では「A Strange Loop(ストレンジ・ループ)」のプロデューサーとして2度目の賞を受賞している。

ローラの協力を得て、父から受けついだ靴屋を立て直そうとするチャーリー役のクリスチャン・ダグラスは、これまで全国ツアーや地方公演で舞台に出ていた俳優で、今回がオフ・ブロードウェイでのデビューとなる。地味ながらも安定していて気持ちよく聴ける声を持っており、チャーリー役にピッタリだ。彼のソロ「Soul of a man」(歌詞:俺は全く役に立たない男だ。賢く高尚な人間からは程遠い。)には心を打たれた。チャーリーの恋人ローレン役のダニエル・ホープDanielle Hopeも、オリジナルのキャストのアンナレー・アッシュフォードAnnaleigh Ashfordに雰囲気が似ていて悪くない。

オンの終幕ではローラとチャーリーが子供だった頃の子役が出てきて、それぞれチャーリーとローラに抱きつくというシーンなどがあったが、今回のオフではそれが省かれるなど、全体的にシンプルになりシェイプアップされている。そのお陰もあってか今回の方が感動を呼んだ。

最近のチケットはオフでもそこそこするがオン程ではないので、出来がさらに良くなったこの作品、今のニューヨークで「一番お得な観劇」と言えるかも知れない。

元々ロンドンが舞台のストーリーなので、今回の作品にはカルム以外にも2人の役者がイギリスから来ていた。私が観劇した8日はエリザベス女王が死去された日だったが、カーテン・コールではカルムが「僕ら3人にとって、今日が意味するものは大きくて‥‥。(英国の国旗をアレンジしたブーツや衣装を指しながら)衣装のデザインを見ても彼女のことを想い起こさずにはいられません。この場を使って、英国に70年の生涯を捧げた女王に敬意と弔いの気持ちを捧げてください。」と語り、イギリスからの観光客や移民も多い観客から、大きな拍手を受けていた。

あらすじ:チャーリーは、突然亡くなった父から倒産寸前の老舗靴屋を受け継ぎ途方にくれる。しかしひょんなことで出会ったドラッグ・クイーンのローラから聞いた「男性用のハイヒールはみんな出来は悪いのに値段だけは高い」という話からヒントを得る。チャーリーは靴のデザイナーとしてローラとパートナーを組み、新しい靴の開発に挑む。「デザインはセクシーながらも男性の体重に耐える、履き心地のいい紳士用ハイヒール」でビジネスの建て直しを図ろうとするのだった。

なおこのミュージカルのプロデューサーの1人である川名康浩氏は、2013年に個人として初めてトニー賞を受賞した日本人である (『キンキー・ブーツ』でトニー賞ベストミュージカル(プロデューサー)を受賞)
8/29/2022

Stage 42
422 W 42nd St, New York, NY 10036
公演時間:2時間25分(休憩なし)
公演期間:2022年8月25日〜11月20日

舞台セット:9
作詞作曲:9
振り付け:9
衣装:9
照明:8
総合:9
Photo by Matt Murphy
Photo by Matt Murphy

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