マザー・オブ・ザ・メイド(乙女の母)
あらすじ&コメント
ジャンヌ・ダルクはご存知の様にフランスの国民的ヒロインだが、12歳の時に神の声を聞いたと言われている彼女は、17歳でフランス軍を率いて聖人扱いされ、最後は19歳で 火あぶりの刑となる。
物語はジャンヌが神の声を聴いた頃から始まるが、母親のイザベルとティーンエイジャーの娘のジャンヌとの間で、現代でもあるような会話のやり取りや言い争いがあったりする。
神の声を聞いたという娘に戸惑いながらその一途な娘の心を心配し、兵を率いているジャンヌの眩しい成長を見せられ誇りでいっぱいになるイザベル、そして捕虜になったジャンヌの体を拭きながら嘆き、彼女を見放すフランスに怒り、死刑に処されていくジャンヌの姿に身を引き裂かれる。ジャンヌ・ダルクは聖人と言われても、元々は農家で両親に厳しく質素に育てられた平民の娘で、その背景には母親の葛藤や苦しみがあったという、歴史的人物を陰で支えた人々にに光を当てる趣向の作品だ。
聖人という言葉がピンとこない日本人にとっては、元々ジャンヌ・ダルクに普通の親がいたというのは自然な話だし、一神教にありがちな「神の声」というのも、宗教の匂いの薄い日本では「ジャンヌはちょっと頭がおかしかったのかな」と思わなくもないし、この「高潔な聖人の乙女」が、母親から見れば一人の可愛い娘だという切口は面白く味わいがある。
グレン・クローズの演技には飽きないが、出来ればジャンヌ・ダルクが英雄と言われるまでの経緯やフランスとイギリスの100年戦争などについて予習しておいた方がより面白く観られるだろう。
ジャンヌ・ダルク役は美しい顔立ちのまだ20歳ほどのグレース・バン・パットン。今まで舞台作品で観てきたジャンヌ・ダルクの中では、一番ハマっていた。
戯曲の作者はジェーン・アンダーソン。エミー賞を3回受賞している。グレン・クローズがヒロインを演じ、日本では来年公開される映画 『 天才作家の妻~40年目の真実~)/The Wife』の脚本家でもある。
演出家は、『ロー&オーダー/Law and Order』などのTVドラマの演出家としても有名なマシュー・ペン。
演劇装置はジョン・リー・ビーティー。トニー賞の装置デザイン賞を2度受賞。
11/3/18
Anspacher Theater
425Lafayette St.
閉演予定:12月23日2018年
上演時間:2時間15分(15分の休憩含む)
舞台セット ★★★★★
衣装 ★★★☆☆
照明 ★★★★☆
ストーリー ★★★★☆
キャスティング ★★★★★
総合 ★★★★★