ネットワーク
あらすじ&コメント
USBテレビ局は近年視聴者を失い続けて株主から睨まれている。視聴率獲得の為には、例えニュースであろうとエンターテインメント性を重視しなくてはならないと、25年間ニュース番組のホストをしてきた中年のビールを首にする。 人生を捧げてきた番組から降ろされるくらいなら、いっそ死んだほうがマシだと怒るビール。彼は、そのニュース番組の最後の生放送の中で、その怒りを視聴者に訴えた。「自分は首になった。こんなバカなことがあっていいものか。自分の頭を銃で撃って脳みそ、ぶちまけるぞ 」と告げる。スタジオにいたスタッフが一生懸命、ビールを止めに入るが、その様子が生の映像で流され、ドラマチックな前代未聞のハプニングに視聴者は歓喜して、視聴率がアップ。編成部の野心家プロデューサー、ダイアナは「 ここでビールを利用し、彼に好き勝手な暴言を続けさせれば、視聴率は確実に上がる」と経営陣に提案。視聴率に頼って成り立つテレビ局には、もはや事実を伝える客観的な報道陣のあるべき姿も、ジャーナリストとしての倫理観も存在する余地すら残っていなかった。そしてUSB局はビールをニュース番組に出し続け、彼の好き勝手に自分の生活や社会を批判する司会によって視聴率は大きく増加した。これに味をしめたUSB局は、 ビールをニュース番組から独立させて、 『ビール・ショー』というタイトルの報道番組を作り、 彼を「現代の偽善と戦う男」というイメージで売り出す。やがて、そのショーの中で「テレビというメディアは事実を告発するだけであるべきなのに、世の中は宣伝会社や親会社に振り回されているメディアによってコントロールされている。」と隠れた権力の批判をも始めたビール。最後にはUSB局の親会社まで番組で批判し始めた為、ビールの番組を終わりにする判断が親会社から下される。視聴者と株主との間に挟まれたダイアナと報道部長らは、「番組中に暗殺者によってビールを射殺させれば・・」という手段を選ぶのだった。
元報道部長マックス役のトニー・ゴールドウィンは、映画『ゴースト /Ghost』(1990)で 最後に落ちてくる窓ガラスの破片によって死んでしまう悪役のカールを演じていたので、記憶に残っている人も多いだろう。
ステージ左はガラスで囲まれた副調室。ここからプロデューサーやディレクターが、スタジオのカメラマンやフロア・ディレクターに指示を出す。右はUSB局の近くにあるバーで、一部の観客も座っている。舞台中央の後ろには 視聴者に流されている映像や、劇中のハンド カメラが捉える映像が映し出される大きなスクリーンがあり、ステージ中心はスタジオになっていて、司会者の机が置かれている。
ハンドカメラは、副長室やバーにいて顔が見えない俳優を追うので、観客は時には流れてくる音声を聴きながら、後方の大きなスクリーンを見てストーリーを追うこともある。カメラの使い方やテンポの速さは現代的で、一度に数カ所でストーリー展開する手法は観る側は慣れるまで戸惑うかも知れないが、テレビ業界の舞台裏の雑然とした様子や、テレビと現実が 混乱しているビールの頭の中を表現しているようでもあり面白い。演出家のイヴォ・ヴァン・ホーヴェ/Ivo van Hove は、 『橋からの眺め/A View From The Bridge』リバイバル(2015)でトニー賞を受賞している。
この作品はメディアやニュースへの批判がテーマであり、映画ではそれが未来への警告となっていたが、それが現実となった今、痛烈な現実批判の作品となっている。 とにかくブライアン・クランストンの役作りと演技が素晴らしい。ただ、それ故に彼の一人芝居の様でもあり、オリジナルの映画ファンには物足りない部分があるかも知れない。 閉演予定 4月29日、2019年
Belasco Theater
111 W. 44th St.
上演時間:2時間 (休憩なし)
NYTimes 8
WallStreeTJournal 5
Variety 8
舞台セット ★★★★★
衣装 ★★★★☆
照明 ★★★★★
総合 ★★★★☆
Photo by Jan Versweyveld
Photo by Jan Versweyveld
Photo by Jan Versweyveld
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