On the Twentieth Century 作品レビュー

ブロードウェイ

舞台は緞帳からアートデコ風で良く考えられている。当時を再現した衣装もセットも手がこんでいる。 ミュージカル『ロッキー』でアンディ・カールに出会った人々は、彼のコメディー男優としての才能に驚くだろう。 汽車の客室内という狭い舞台装置の中で長身の体を軽やかに運びながら、うまく頭の弱いハンサムボーイを演じている。

Photo by Joan Marcus, 2015

印象に残る2シーン

第 一幕目10分程立ってからだが、クリスティン・チェノウェスが初めて出て来るシーン。 オスカーのプロデュースする舞台に出ようとオーディションに来たき らびやかな服装の女優に、ピアノ伴奏者として見窄らしい格好でクリスティンが出て来る。 女優がうまく歌えない節を「こう歌うのよ」と、サラッとそのビブ ラートを披露する。 オスカーが「この娘こそ、自分の捜している女優だ」と確信する回想シーンだ。

もう一つのシーンは、リリーを奪い合う オ スカーとジョージは、隣あった客室にいるのだが、その壁の同じ場所に鏡があり(実は吹き抜け)、その想像上の鏡の両側に立って、お互い鏡にうつる自分の姿 (実は相手)を観ながら自分の素晴らしさを歌い上げるナル丸出しのデュエットが、滑稽で可愛くもある。

Photo by Joan Marcus, 2015

Photo by Joan Marcus, 2015

クリスティンの美しい声音は、ストーリーを通して何度も披露され、彼女がオペラの舞台にも出るのもうなずける。

精神障害者のオバアさん役,メリー・ルイズ・ウィルソンはミュージカル『グレイ・ガーデンズ』のリトル・イディの母親役が印象的だった。

『グ レイ・ガーデンズ』ではトニー賞のミュージカル助演女優賞に輝いたウィルソンが、次の仕事が入っていたために続けられず、早く終わり過ぎたミュージカル だった。 83歳とは思えない声量で、歳でうまくキープできない 音程も、「ここ」というところはキチっと決めていく、その味のある歌い方には参る。

ま た、汽車のポーター役の4人が、バレエ『白鳥の湖』の四羽の白鳥しかり、4人でタップを踊り歌うシーンは楽しそうでこちらがついニコニコしてしまうが、こ れはオリジナルキャストで観ておいた方がいいだろう。 アンサンブルのレベルは、1年位するとかなり落ちることが多いので。

し かし、ストーリーの方は、リリーとオスカーとの愛情がどうなったのかあまり説明されず、個々のキャラクターがドタバタ喜劇に追われ、薄いままで終わってし まうところがなんとも惜しい。 あの時代のドタバタ喜劇は、確かにこういう風だったのだろうが、そのままで終わってしまうのは、物足りなく、皆のキャラが いつまでも薄いままなので、最後には、誰がどうなっても良くなってしまう。最後の落ちも、劇場から出て来たらすっかり忘れてしまっていた。

他のメディアのレビュー

NY Times: 8
Time Out: 7
Wall Street Journal: 8

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