Paranormal Activity (パラノーマル・アクティビティ)

Paranormal Activity
(パラノーマル・アクティビティ)

演劇 ブロードウェイ
Paranormal Activity
(パラノーマル・アクティビティ)
Paranormal Activity (パラノーマル・アクティビティ)

「場所が呪われているのではない。人が呪われているのだ」というキャッチコピーを掲げ、2026年8月にブロードウェイで幕を開けたホラー演劇である。

舞台のもととなった同名映画は大きな人気を呼び、シリーズ化された。日本でも、世界観を受け継いだ独自作品『パラノーマル・アクティビティ 第2章 TOKYO NIGHT』(2010年)が製作されているので、ホラー・ファンならタイトルを知っている人も多いだろう。

演出は、ダークな没入型演劇『スリープ・ノー・モア(Sleep No More)』を成功させたフェリックス・バレット(Felix Barrett)。脚本は、ブロードウェイ作品『グレイ・ハウス(Grey House)』の劇作家リーヴァイ・ホロウェイ(Levi Holloway)が手がけた。

2025–26年シーズンのトニー賞授賞式を6月に終え、新シーズンに入ったブロードウェイに、その一番手として登場した話題作である。ホラー映画の恐怖を生身の舞台でどのように表現するのかにも注目が集まった。

あらすじ&コメント

映画とは異なる、新しい物語
舞台化の構想は、バレットが「映画を観た時に体験したあの怖さを、劇場で再現できないか」と考えたところから始まったという。2023年頃にホロウェイが加わり、映画のトーンと世界観を受け継ぎながら、別の物語を書くという方針が決まり、異なる場所と人物を描いた独立した新作になっている。

本作は2024年7月、イギリスで初演され、その後、米国の都市などで上演され、2025年12月にロンドンのウエストエンドに進出した。そこでローレンス・オリヴィエ賞の「最優秀新作エンターテインメント/コメディ作品賞」にノミネートされている。

シカゴに住んでいた新婚夫婦、ジェームスとルーは、新たな生活を始めるため、ロンドンに引っ越して来た。シカゴにいた頃、ルーは夢遊状態に陥ったり、記憶が抜け落ちたりすることがあり、「何かが自分を見ている」という感覚を拭い去れずにいた。超常現象に懐疑的なジェームスは、環境を変え、何かと干渉してくる母とも距離を置けば、ルーの気分も晴れるだろうと考え、ロンドンへの移住を決めたのだ。しかし、せっかく新居に移った後も、ルーの「何かがおかしい」という感覚は消えなかった。

キャスト
物語の中心となるのは、ルーとジェームスの若い夫婦であり、基本的に、この二人を中心に展開していく。ほかに、若い夫婦の生活に干渉したがるジェームスの母キャロランと、オカルト系ポッドキャスター兼霊媒師、エセライン・コットグレイヴ(Etheline Cotgrave)が一部出てくる。名字に、「墓」を意味する“grave” の綴りが含まれているのは、どこか意味深に響く。

ルーを演じるのはシェール・アルヴァレス(Cher Álvarez)、夫ジェームス役はトラヴィス・A・ナイト(Travis A. Knight)。二人とも今回がブロードウェイ・デビューだが、ナイトは、同じホロウェイ作の『グレイ・ハウス』のシカゴ公演での出演経験がある。
ジェームスの母キャロランを演じるシャノン・コクラン(Shannon Cochran)は、映画『ザ・リング(The Ring)』(2002年)にも出演しており、ホラー・ファンには見覚えのある顔かもしれない。

精巧に造られた二階建ての家

舞台装置と衣装はフライ・デイヴィス(Fly Davis)が担当した。デイヴィスは『キャロライン、オア・チェンジ』でトニー賞にノミネートされたデザイナーである。

舞台上の二階建ての家は、ドールハウスの断面を見るように、客席から各部屋を見渡せる。一階には台所とリビングルーム、二階には、将来の赤ちゃんのために用意されたベビールームにつながるドアと、寝室、洗面所があり、細部まで非常にリアルに造り込まれている。

全体を通して交わされるセリフはそれほど多くない。その代わりに、ホラー特有の思わせぶりな静寂と、観客を突然ビクッとさせる音響、照明、視覚効果が多用されている。

観客がシーンを追って歩き回る『スリープ・ノー・モア』で知られるバレットの演出は、今回は座席に座ったまま没入感を味わわせてくれる。ホロウェイの『グレイ・ハウス』は、不気味さやキモさの強い作品だったが、本作は、より直接的に観客を驚かせるいわゆるジャンプスケア(突然の驚かし演出)が前面に押し出されている。

安心感が崩されていく怖さ
本作は、まず日常の安心感を作り上げ、それを一気に崩すという映画的な手法を用いている。確かに若い夫婦は感じがよく、俳優二人の息も合っている。二人のやり取りは自然で、明るく柔らかい雰囲気があり、観客が好感を持てる夫婦だ。そして、その親しみやすさがあるからこそ、日常生活に少しずつ忍び寄ってくる悪霊の存在の怖さが倍増する。

セリフは少ないが、恐怖から逃げまわったり、叫んだり、全身で恐怖と緊張を表現したりと、夫婦役の二人にとっては、相当なエネルギーを要する役であろう。

観客は観客で、イリュージョンが起こるたびにビクッとする姿がシルエットで見えたり、あちらこちらで悲鳴が聞こえたりする。それに対して周囲から笑いが起こり、劇場全体で一緒にスリルを味わう不思議な一体感と安堵感が生まれていた。

私が観劇した日は、20代から30代と思われる観客がほとんどで、普段のブロードウェイ劇場というより、映画館に近い観客層だった。映画『パラノーマル・アクティビティ』シリーズのファンが多かったのかもしれない。私はホラーが苦手なのだが、周囲の観客は大いに盛り上がっていた。こうしたドッキリ系が好きな人には、たまらない舞台なのだろう。

音は全体的にかなり大きい。扉が開く音、ドアベル、ラジオ、ビデオ通話など、あらゆる音響が大音量で鳴る。大きな音が苦手な人は、耳栓を用意した方がよい。

映像の編集やカメラワークに頼れない生身の舞台で、ホラーを描く難しさを考えれば、非常によくできた作品だといえる。次々と仕掛けが続くし、観客に、次はこの窓で何かが起こるのでは?と思わせておきながら、別の場所で異変が起こるなど、観客の注意を巧みにそらし、「次はどこ?何が来る?」というスリル感を最大限に引き出す手法も見事だ。

その一方で、ストーリーの展開にはいくつか曖昧な点が残り、そのために結末がやや弱く感じられた。観ている間は考える余裕がなく、観劇後になって「あれは結局、何だったのだろう」と思い返す疑問点が出てくる。物語がもう少し明確であれば、さらに完成度の高い、ブロードウェイらしい秀作になっただろう。

おすすめの座席
オーケストラ席のD列だったが、二階建ての家の舞台は見上げる場面も少なくなく、首が疲れることもある。メザニン席が良いのかと思ったが、メザニン席で観た人によると、劇場のEXITサインがいくつも視界に入り、俳優の表情が遠くてはっきりとは見えないらしい。おそらく、一階中央のF列からG列あたりが最も観やすいのだろう。

初週のプレビュー4公演は約42万2,000ドル、翌週のプレビュー8公演は約72万9,000ドルを売り上げ、ほぼ満席が続いた。ミュージカルに比べれば興行収入の額は大きくないが、スター不在の新作ストレートプレイとして、週70万ドルを超える成績はかなり力強く、上出来といえる。映画シリーズやホラーのファンが一通り観終えたあと、どこまで幅広い観客を引きつけ続けられるかが、今後の焦点だろう。(8/28/2026)

August Wilson Theatre
245 West 52nd Street
上演時間:約2時間10分(休憩1回)
公演期間:2026年8月25日〜2027年1月3日

舞台セット:9
衣装:6
照明:8
キャスト:9
総合:8
@ Matthew Murphy
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