The Saviors救世主たち

The Saviors
救世主たち

オフ・ブロードウェイ 演劇
The Saviors
救世主たち
The Saviors救世主たち

13歳と14歳、二人の祭壇奉仕者(altar boys)の少年が成長していく過程を細やかに描きながら、人はどうやって他人を信じ、そしてどこまで互いを救うことができるのだろうか、という問いを投げかける作品である。

作者は、2025年に『Well, I’ll Let You Go』で劇作家として注目を集めたバッバ・ウェイラー(Bubba Weiler)。実は彼は俳優としても活躍しており、ブロードウェイ『Harry Potter and the Cursed Child(ハリー・ポッターと呪いの子)』でスコルピウス・マルフォイ役も演じていた。

 

教会の祭壇が舞台になっており、劇場に入ると会衆の聖歌が静かに流れていて、厳粛な空気に包まれていた。そこに少年二人が、客席の通路をおしゃべりしながら降りてくることで、その静寂が破られる。

13歳のマイケルと14歳のポールは、教会で祭壇奉仕者を務める親友同士だ。いつものように二人で祭壇を片付けていると、冬の寒さから逃れて教会に宿を求めてやって来た若いホームレスのジュリアンが現れる。さらに、教会のボランティアとして若者たちを指導するジュディも加わり、この4人を中心に物語は進んでいく。

思春期を迎え、変化していく自分の身体や心に戸惑いながら、マイケルとポールは悩み続ける。良い人間になりたい、人を救いたいと心から願っている。それでも不完全な人間である以上、その願いとは裏腹に、相手を傷つけてしまうこともある。

人を求めながら、人とうまくつながることができずにもがく彼ら。しかし教会の祭壇に置かれた聖母マリア、幼子イエス、そして養父ヨセフの像は、そんな彼らをただ静かに見つめている。

この作品で何より効いているのは、主役の二人を実際に役柄と同じ年頃の俳優が演じていることだろう。ウェイラーはこの戯曲を19歳のときに書き、13歳と14歳の主人公は実際にその年頃の俳優に演じてもらうことにこだわったという。

マイケル役のイヴァン・ハウ(Ivan Howe)とポール役のジュリアス・リンゼル(Julius Rinzel)が演じることで、思春期の少年特有の、言葉ではうまく表現できないやるせなさや、まだ社会に慣れていないぎこちなさが、そのまま伝わってくる。

もちろん、二人が非常に達者な若手俳優だからこそ成立しているのだが、いくら演技力のある若い成人俳優を起用しても、こうはいかなかったのではないかと思う。そして、とっくの昔に大人になってしまった観客である私たちは、その不器用さを時に歯がゆく感じながらも、若者たちの純粋な葛藤にぐいぐいと引き込まれていく。

ウェイラー自身も13歳の頃からシカゴ周辺で子役として活動を始め、その後ニューヨーク大学(NYU)のPlaywrights Horizons Theater Schoolで演技と戯曲の執筆を学んだ。『The Saviors』を書いたのは19歳のときだったという。

卒業後は俳優として活動を続け、2019年から2020年にはブロードウェイ『Harry Potter and the Cursed Child』でマルフォイ役を務めた。さらに2024年にはレベッカ・ギルマン作『Swing State』での演技により、ドラマ・デスク賞などにノミネートされている。

一方、劇作家として注目を集めたのが『Well, I’ll Let You Go』である。ドラマ・デスク賞のOutstanding Playにノミネートされた。

演出家ジャック・セリオ(Jack Serio)とはNYU時代からの知り合いで、ウェイラーが最初にセリオに読ませた自作戯曲が、実は『The Saviors』だったという。二人はその後『Well, I’ll Let You Go』を成功させ、長い間温めてきた『The Saviors』が今回、アトランティック・シアター・カンパニーで世界初演を迎えることになった。

ウェイラー自身、カトリックの環境で育ち、この作品には少年時代の経験や信仰との葛藤が強く反映されているという。彼は、信仰や共同体が持つ美しさと、そこに伴う痛み、その両方を抱えながら育った自分自身の経験を作品に投影している。

『The Saviors』が描くのは、信仰、友情、疑念、そして成長である。そして迷っているのは、思春期のポールとマイケルだけではない。大人であるジュリアンとジュディもまた、揺れ動くアイデンティティや信仰心を抱え、周囲の人々や自分自身を理解できずに苦しんでいる。

「救う」とは一体何なのか。善意を持って相手に手を差し伸べても、それが必ずしも相手を救うことになるとは限らない。ウェイラーは、そんな人間の不完全さを責めることなく、優しい目で描いている。今後が楽しみな劇作家である。(8/6/2026)

出演者

クリスタル・フィン(Crystal Finn/ジュディ役)
ニューヨークを拠点に活動する舞台女優・劇作家。ブロードウェイデビュー作『Birthday Candles』でシアター・ワールド賞を受賞した。どこか風変わりなコミカルな身振りの中から、ジュディが抱えている緊張感や漠然とした不安が伝わってくる。

イヴァン・ハウ(Ivan Howe/マイケル役)
Netflixのドラマ『エリック』に出演。『The Saviors』では13歳のマイケルを、繊細かつ自然に演じている。。

ジュリアス・リンゼル(Julius Rinzel/ポール役)
オフ・ブロードウェイ『The Antiquities』でデビューした若手俳優。ポールの揺れ動く信仰心と友情を丁寧に演じている。

スタンリー・シモンズ(Stanley Simons/ジュリアン役)
オーストラリア・シドニー生まれで、現在はブルックリンを拠点に活動する俳優。A24映画『アイアンクロー』でマイク・フォン・エリック役を演じ、注目を集めた。

クリエイティブチーム
演出:ジャック・セリオ(Jack Serio)
舞台装置:デヴィッド・ジン(David Zinn)
衣装:エイヴリー・リード(Avery Reed)
照明:ステイシー・デロジエ(Stacey Derosier)
音響:レア・ゲルペ(Leah Gelpe)

Atlantic Theater Company – Linda Gross Theater
336 West 20th Street, New York, NY 10011

上演時間:約90分、休憩なし
公演期間:2026年7月27日〜8月15日(延長後)

舞台セット:9
衣装:7
照明:7
キャスティング:9
総合:9
@ Ahron R. Foster
@ Aaron R. Foster
@ Emilio Madrid
@ Emilio Madrid

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