Photo©Joan Marcus
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トニー受賞者マシュー·・ブロデリック、ジュリー・·ホワイト、アナリー・アシュフォードという3人の華麗なキャスト
1995年にオフ・ブロードウェイで初演された作品。犬を女優が演じ、犬の気持ちを台詞にしているところが面白いところなのだが、そのために、多くのプロデューサーが引いていた時期があったらしい。実は、Dogという言葉には「セックス好きな男」という意味もあり、女性が性差別に敏感なアメリカでもあり、また人と他の生き物との境界線が、日本のアニミズム的思考より強い文化にも原因があったのかもしれない。
トニー受賞者マシュー·・ブロデリック、ジュリー・·ホワイト、アナリー・アシュフォードという3人の華麗なキャスト、やはりトニー賞受賞者ダニエル・サリバンの演出で、ペットと飼い主との愛情、そしてペットを飼う家ならよくある家族間での焼きもちや、公園での散歩の時間での出来事などを、コメディタッチで描いた心暖まるお芝居。ただ、台詞の面白さがこの作品の魅力でもあるので、英語の理解力が要される。
アナリー・アシュフォードは素晴らしいコメディ俳優で、『キンキーブーツ』や、『我が家の楽園(You Can’t Take It With You)』では、愛らしさのあるリラックスしたソフトタッチで人を笑わす。ひょうきんな犬を描きながらも、さかりの時になると、その雄を追っかける時の勢いの良さなども自由自在に表現できるいい俳優だ。 マシューはどういう役を演じても、いつも同じ淡々としたエネルギーの低い人の演技をするので、芝居が上手いのか下手なのか良くわからないが、この配役は成功している。妻役は、犬に焼き餅を焼きながらも、どこか温かいものを感じさせるいい(→↑と同様です。)味を持ったジュリー・ホワイト。ロバート・セッラは、3役(セントラルパークにやはり犬の散歩に来るトム/グレッグの心理セラピスト/ケイトの女友だち)をこなす。飼い主役としてストレートの男性を表現している時は自然でいながらキャラがあり、とてもいい俳優だと思った。しかし他の2役となると、急に演技が大袈裟になる。ケイトの女友だちの役では、当然女装して出てくるのだが、ハリウッドの異性服装倒錯の役柄によく見られるコミカルな表現そのまま。心理セラピストの役では、ゲイ丸出しの型にはまった役作りだった。 簡単に拍手を取りやすい道なのだが、すでにゲイや異性服装倒錯ということが、自然な異常現象として受け入れられている今日この頃なので、ゲイを演じる役者は、型にはまった役作りではなく、もっと性的嗜好を越えたところにある自分らしい表現を開拓してもらいたい。
犬に話す声を与え、瞬間瞬間だけを精一杯生きる無邪気な犬らしい表現で笑わせたりジーンとさせたりする。犬好きのあなたなら、そして、犬好きでないあなたでも観てね、と言いたくなるチャーミングな作品。