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『ハリー・ポッターと呪いの子』でトニー賞最優秀作品賞を受け、今、劇作家・TVドラマ作家として一番の売れっ子と言われているジャック・ソーンによるオフ・ブロードウェイ作品である。

あらすじ&コメント

友達の様に自分の恋人との性生活まで話してくる母親を持つマリー。 その上、異常に娘のことを心配している。マリーはそんな母親を煩がりながらも、何度も鳴る彼女からの電話に答えてしまう。今日は、彼女とルームメートのジルのアパートで、読書会が行われる。本好きの知り合いの20代の若者の男女4人は、毎週日曜日に集まって読書会を開いていた。メンバーの連中は、それぞれ作家や俳優を目指す若者たちだ。日曜日に行う理由は、「週末の最後の夜は気が滅入る。自由な時間なのに、次の日に始まる5日間の仕事のことを思うと憂鬱になる時間だ。だから、読書会をして気を紛らわす。」と言うものだった。丁度その日に、マリーは仕事をクビになり、絶望感に苛まれている。が、次々と読書会のメンバーは訪れてくる。しかし、本の話はそっちのけで「仮に僕らが13歳で、もしダンス・パーティーでダウン症の子から「踊って」と言われたら、どうする? 断るか踊るか?」と意見を言い合う。彼らはZ世代らしく、弱々しくて簡単に攻撃的になる。情緒不安定みたいなおしゃべりが続き、大人から見るとハラハラする。皆、自信が無くて繊細すぎて傷つきやすいのに、それ故に逆に相手の心をグサッと刺す様なことを言ってしまう。マリーは皆が帰ってしまうと、夜中の2時というのに一人大声で泣き出す。安いアパートでは床や壁は薄く、彼女の泣き声は丸聞こえだったのだろう。下の階に住む30代独身の売れないSF作家は、マリーのことをそれ程知らないのだが、心配して見に来てくれる。しかし投槍になっているマリーは、彼をアパートに入れるとセックスしようと言い出した。「いやいや、そんなつもりで来たわけではない」と言う彼に、彼女は「私とセックスしてもう2度と会わないか、私とデートするけれど一年間はセックスしないか・・」と攻め寄る。彼はその年の功で真面目に取り扱わないが、彼女は益々荒々しくなっていく。とうとう彼は、取り留めもないことを言い続けて攻撃的になっていく彼女から、逃げる様に部屋から出て行ってしまう。彼女はパニックを起こし、母親に電話し、すがる様にして「家に戻る」と告げるのだった。 マリーにとって、この世界は一人で暮らしていくには怖かった。だから、そういう自分に育てた親の元に戻っていくしかない。彼女の姿は暗い。

ジャック・ソーンは「自分は頭がおかしい」と本人は言っている。そんな彼の持つ世界観は新鮮で面白い。が、残念なことにこの読書会の若い5人のキャラクターは、十分にず、興味深いZ世代の人生観は十分に浮かび上がってこなかった。 最後にこれら6人の未来がどうなったのかが、語られる。自殺をしたり、脳腫瘍になって死んでしまったり・・・レズビアンだった一人は、結婚してコネクチカット州で家族と平凡な人生を送っていた。どれもこれも彼らが考えていた未来とは大きく異なった現実だった。

この作品の素敵なスパイスになっているのは、俳優たちが時々突然 流れてくるリズミックな音楽に合わせて、踊るシーンだ。例えば、マリーとルームメートは、彼らの家で行われる読書会の準備をしながら、 アパートの中を音楽に合わせて走ったり、じゃれあったりして踊る。彼らの仲の良さや無邪気さが表現される。読書会でも、 5人がお互いの人間関係を表現して踊る。抽象的なので、ストーリーの展開とは関係ない。しかし、動きはジェスチャーの要素を多く含んでおり、男女関係や友人関係を見事に表現しており、振付師(兼演出家の)リリー・サンデー・エヴァンズには、拍手を送りたい。  人と人との関わり合いは、言葉を超越したところにあるというのは言うまでもない。 体を使っての表現も挿入させるのは、去年のシーズンに公演されたブロードウェイの『Choir Boys』でも使われていた手法だが、コマーシャルの様にチラッと入るテンポの速い音楽に合わせたダンスは、ともすれば理屈っぽく単調になりがちな演劇の作品に、生命の息を吹き込んでくれている。
10/11/2019
公演期間:9/23/19〜10/13/2019

Linda Gross Theater
336 West 20th Street

公演時間:90分(休憩なし)

舞台セット:9
衣装:7
振り付け:9
総合:7
Photo by Monique Carboni
Photo by Monique Carboni
Photo by Monique Carboni
Photo by Monique Carboni

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