ソルジャーズ・プレイ
あらすじ&コメント
捜査が進むにつれ、殺されたウォーターズ軍曹の人物像が徐々に浮かび上がってくる。それは白人にバカにされないように努力を重ね、白人社会における地位を得てきた姿だった。彼は白人にバカにされない様に常に努力し、優秀な白人と同じように振る舞おうとしていた。つまり当時の白人が、偏見に基づいて考えていた黒人のように振舞うことを、殊更嫌っていたのだった。
ある時そんなウォーターズ軍曹のところに、CJと呼ばれる黒人兵士が配属されてくる。CJは野球がうまく、歌も上手。フレンドリーで明るく、シンプルな男で、何より黒人であることを卑下せず、誰とでも仲良く振る舞う男だった。しかし、それがウォーターズ軍曹には許せない。彼は白人が偏見を持ってイメージする黒人の「汚い、バカ、怠惰」というイメージを更に促す様な黒人を嫌ったのだが、それ以上に許せなかったのは、引け目を感じずに黒人であることを悔やまず、自然体で生きているCJだった。ウォーターズにとって、黒人に生まれたことを恥じずに堂々と黒人で居られるCJは、どうにも我慢ならず、憎かった。遂には、ある罪の濡れ衣をCJに着せて軍事刑務所に送り込んでしまう。無実の罪で拘束され、精神的に追い込まれていったCJは、獄中で自殺。それを知った軍曹は狼狽し、バーでグタグタに酔う。その帰り道で何者かに撃たれ、翌朝息絶えていたウォーターズが発見された。
チャールズ・フラーが脚本に込めた思いは、40年経った今なら多くの人が理解する。現代の観客ならば、あの時代に生きたウォーターズ軍曹を、社会の偏見が生んだ寂しく悲しい人間として受け入れられる。そしてあのような時代を繰り返したくないという気持ちにもなっただろう。
オフで演じられてきたこの作品が今日、ブロードウェイで初公開となった背景には、そのような時代の変化があったのではないだろうか。
1981年にオフで初めて舞台化されたこの作品は、その後1年間も上演され、1984年には『ソルジャー・ストーリー』という題名で映画化もされている。そこでは当時無名だったデンゼル・ワシントンが好演し、話題となった。
今回の舞台のキャスティングは、見事に的を射ている。
バランスのとれた落ち着きを保ち、あたりは柔らかいが信念に忠実な黒人大尉をブレア・アンダーウッドが。社会への憎悪を自分に向けて苦しむ黒人軍曹をデヴィッド・アラン・グリアが。偏見が微妙に見え隠れする白人大尉をジェリー・オコンネルが。それぞれの役柄になりきった演技は、見応えがある。サスペンスの様な緊迫感のなか、観客はグイグイと引き込まれていく。
時々歌われる黒人兵達によるアカペラのバラードは、緊張したシーンが繰り返される中で、ふっ、と息をつく時間を与えてくれて耳に優しい。それが作品の流れに沿っていないとの批評もある様ではあるが・・・。 1/23/2020
American Airlines Theatre
227 West 42nd Street
公演時間:1時間50分(休憩あり)
公演期間:2020年1月21日〜3月15日