American Utopia アメリカン・ユートピア

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アメリカン・ユートピア

スペシャル・イベント ブロードウェイ
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かの有名なニューウェーブのロックバンド、トーキング・ヘッズを率いるデイビッド・バーンのコンサートが、米国ツアーを経てブロードウェイにやってきた。ギターリストであり、シンガーであり、作詞、作曲もこなすデイビッド・バーンは、グラミー賞、アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞を獲得したうえに、ロックの殿堂入りも果たしているが、ブロードウェイで「特別トニー賞」に輝いた。このコンサート形式のショーには、ヒット曲「バーニング・ダウン・ザ・ハウス 」や「ワンス・イン・ア・ライフタイム」など、数々の名曲が盛り沢山だ。

あらすじ&コメント

舞台ではバンドメンバーが動き回りながら演奏をし続けるのだが、その総勢12人の内訳は、太鼓やパーカッションなどのリズムセッションが6人、ベースギター、ギター、キーボードが1人ずつ、ヴォーカル兼ダンサーが2人。そしてデイビッド・バーンが、ときにギターを、ときに歌を、ときに語りを披露する。もちろん踊り廻りながらだ。

皆コンサートが本業のメンバーなので、高いレベルの演奏を聴かせてくれる。そのみごとな演奏を続けながら踊るのだから、相当に体力も鍛えたのではないかと思う。 振り付けも首のかすかな傾きや肘から先や膝から下を使った独特な動きが、デイビッド・バーンの曲の個性にしっくり合う。

舞台は左右と奥の3面に、細い鎖がカーテンのように下がっているシンプルなものだが、照明が工夫されていて飽きがこない。その舞台にはバーン氏も含めた全員が、白いシャツにグレーのシンプルなスーツで身を固め、足元は裸足という出で立ちで登場する。聴覚だけに止まらず視覚でも大いに刺激される。とにかくカッコいい作品に仕上がっている。

デイビッド・バーンは1952年にスコットランドで生まれ、2歳の時にアメリカ大陸に移住。その後1974年にニューヨークに移り、翌年には昼間の仕事を辞めてトーキング・ヘッズを結成。独特の個性的なサウンドとパフォーマンスで頭角を顕し、ソロになってからは振り付けやステージ・セッティングなどにも関わり、活動領域を広げながら新たな創作活動に挑戦し続けている。と同時にワイラ・サープやファット・ボーイ・スリムなど著名なバンドとの共演も精力的にこなしている。現在は69歳という佳境に入りつつある彼だが、その所為なのか、他のブロードウェイのショーのように週8回ではなく、6回の公演となっている。にも拘わらず人気は高く、売り上げも好調のようだ。

少し昔ならニューヨークの様々なクラブで、彼の演奏を安く、容易に聴けたそうだ。残念だが今は良い席なら200ドル以上する。だが幸いなことに昨年、映画監督スパイク・リーによって映画化されHBO他で観れるようになった。高い臨場感は期待できないが、もしニューヨークまで来れないときは、そちらの鑑賞をお勧めしたい。

さて、コンサートでは次曲までの合間に、出演者が自分の人生の出来事を語ったりするが、デイビッド・バーンのそれは、かなり抽象的で理念的な話が多い。ところが今回はその間に、投票の大切さを熱く具体的に語っていた。そこで調べてみると、どうやらVote(投票)という団体と共に活動しているらしい。米国では投票の呼びかけが種々なシーンで聞かれるが、政治に興味のない人が中途半端な知識で投票しても、いい結果は期待できない。できるなら投票を呼び掛ける前に、政治がどのように人々の生活に影響を及ぼすのか、過去の歴史等を題材にして学ぶ機会を提供するのが出発点ではないかと、個人的には思う。全く別の話になってしまったけれど・・・
1/21/2022

St. James Theater
246 W.44th St.
公演時間:1時間45分(休憩なし)

舞台セット:7
作詞作曲:10
振り付け:9
衣装:8
照明:8
総合:9
Photo by Theo Wargo/Getty Images for Tony Awards Productions

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