あらすじ&コメント
舞台は1975年ベトナム戦争の末期のサイゴン。辛い戦いの中で米国兵士クリスは美しく純粋なキムと恋に落ちる。一緒に米国に連れて帰ると約束するが、米国撤退の混乱で彼女と離れ離れになってしまい、一人米国に戻ったが、彼女は彼の子を身ごもっていた。3年の月日が流れ、キムは幼い息子と貧しい暮らしに耐えて生きている。キムには戦争で死んだ親同士が決めた許嫁が居たが、今は共産党でファシズムの軍人となっていた。彼はある日クリスの息子を殺害しようとした為、キムは彼を殺してしまう。キムは、エンジニアと呼ばれるピンプに連れられてバンコクに逃げ、いかがわしいクラブのダンサーをしながら、クリスが迎えに来ることだけを生きがいに息子を育てていた。
一方アメリカで、自分の息子がいると知ったクリスは、愛する彼の妻のエレンを連れ、戦争孤児の為の福祉事務所に勤めて、間に入って窓口となっていたジョンと一緒にキムに会いにバンコクに来る。しかしキムはそのエレンと先に出会ってしまい、彼女に息子をアメリカに連れていくように頼むが、エレンは自分はクリスと自分の子供を育てたいと断る。クリス夫婦は、キムに送金して息子にもアメリカン・スクールに通わせたいと考えていたが、キムは自分の子供に自由で豊かなアメリカで育って欲しいと考えていた。キムは息子を部屋の外に出して、クリスが戦争中に「一人で身を守れるように」とキムに残した銃で自らの命を絶つ。
キム役は、17歳の時に『ミス・サイゴン』のプロデューサーに発見されたのエヴァ・ノブレザダ(Eva Noblezada。今は21歳) 。フィリピン人とアメリカ人のハーフで、生まれはノースキャロライナ州。ロンドンに住み、高校で音楽を学んでいた。ウェスト・エンドでこのキム役を演じミュージカル『レ・ミゼラブル』出演も経て、アメリカのブロードウェイのデビューを果たした。アリスター・ブラマー(Alistair Brammer)は、ルックスも体格もクリス役にピッタリのイギリスのミュージカル俳優だ。エンジニア役にはロンドンで同役を演じローレンス・オリヴィエ賞にノミネートされたフィリピン人のジョン・ジョン・ブリオンズ。この作品はミュージカル『王様と私』と並んで、アジア人俳優が大いに活躍できる舞台である。そして、アンサンブルには、日本人で元劇団四季の女優の南由水も出演し活躍している。
一つ気になったのは、クリス夫婦がキムと息子に送金してバンコクでの豊かな暮らしを考えることが、利己的だと処理されていたことだった。何故、あれだけアメリカの資本主義の批判を何度も出しているのにも関わらず、バンコクで経済的に恵まれた生活をすることが、アメリカでの生活よりも劣るのと決めつけている矛盾はしっくり来なかった。
2018年1月14日 閉演
Broadway Theatre
1681 Broadway
上演時間:2時間40分(15分の休憩含む)
舞台セット ★★★★★
作詞作曲 ★★★★☆
振り付け ★★★★☆
衣装 ★★★★☆
照明 ★★★★★
総合 ★★★★★
Photo by Matthew Murphy
Photo by Matthew Murphy
Photo by Matthew Murphy
Photo by Matthew Murphy