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舞台はロンドン。主人公の60歳の男性ボーが、椅子に座ってスポットライトにあたりながら、ゲイの歴史を優しく観客に語りかける。
ゲイであるということだけで残酷な仕打ちを受けた時、そしてAIDSで恋人を失った時。
そしてその語りの間々に、天井まで本棚になっている壁にぎっしり1000冊もの本が置かれたグランドピアノのあるボーのロンドンのアパートに舞台は戻る。
そこではボーの過去の10年間の話が描かれるが、40歳も年下で20代のルーファスとの出会い、彼が引っ越してきて同棲、そしてある日ルーファスから求婚を受ける。
しかしボーは「まだ若いあなたが、いつか私の前立腺のことばかり心配するようになってはいけないわ」と断る。
そして5年後、ルーファスは若いクリストファーと結婚し、その式にボーは仲人として出席する。
数年後、彼らの養女の赤ちゃんの世話を頼まれる。最初は慣れない赤ちゃんの世話でどぎまぎしているボーだったが、次第に手の中にいる赤ちゃんの可愛さにうっとりしてしまう。
そして ♪「Raw Raw Raw Your Boat」 を優しく歌いかける場面で、舞台は終わる。
この作品は、戯曲『BENT ベント』(1979年)で有名になった78歳の劇作家マーティン・シャーマンによるオフ・ブロードウェイのストレートプレイで、ボー役を演じるのは、日本ではそれほど知られていないが、ブロードウェイでは有名なハーヴェイ・ファイアスタイン。
1970年代、殆どのゲイが社会から隠れて存在していた時代から、堂々とキャバレーで女装をして歌い、ゲイを話題にするコメディアンだったが、その後はトニー賞で演劇主演男優賞やミュージカル主演男優賞、 演劇作品賞だけではなく、『ラ・カージュ・オ・フォール』でミュージカル脚本賞も受賞している。ヘビースモーカーだった彼はガラガラな声が有名で、聞きにくいのが難点ではあるが、彼特有の脆弱性の中にある温かさと強さを表現し、笑いの間も絶妙で、味のある舞台となっている。
Public Theater 内Martinson Theater
425 Lafayette St.
尺:1時間40分(休憩なし)
舞台セット ★★★★☆
衣装 ★★★☆☆
照明 ★★★☆☆
総合 ★★★☆☆

©Joan Marcus 2017

©Joan Marcus 2017

©Joan Marcus 2017