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ストーリーはすぐに舞台下手にある青年ルークと両親が居るダイニングルームに移る。ルークが行方不明になった時、教会や近所の人々や彼のガールフレンドが家族と一緒になって彼を探し続けてくれた。 その人たちを招待したルークの歓迎パーティを母親は計画しているが、彼は誰にも会いたがらない。 オンライン上のヨット・レースのゲームで、ルークは自分のヨットにKID VICTORYという名前をつけた。そして、そのゲームを通して知り合った年上の男性に会いに行って誘拐されてしまい、一年間地下室で性行為を強要されていたということが、彼のフラッシュバックから次第に分かってくる。しかしルークは、実は監禁されるずっと前から精神的に追い詰められていた。
ミュージカル『キャバレー』や『シカゴ』、そして『蜘蛛女のキス』などで知られているジョン・カンダー作曲と聞いて観に行った。暴力的で緊張感の張り詰めた舞台で歌われる静かで美しいメロディーは、そのそぐわなさが一層悲しさを引き立たせる。映画『明日に向かって撃て!』で「雨に濡れても」が流れるシーンの様だ。ルークの父親の美しい声による最後の曲に、涙する観客もいた。
ルークを演じるのはブランドン・フリン。まだ23歳の若さで、役者業に勤しんでいない時は、昼間は会計検査人、夜はバーテンダーとして働いているそうだ。社会に馴染めない繊細な青年をうまく表現していた。ミュージカルだが、彼は一度も歌わない。歌うこと自体が気持ちの表現 の一つなので、心を閉ざしているルークの役柄にはそれが似合わないからだろう。いい選択だと思った。母親役は『コンタクト』でトニー賞も受賞しているカレン・ジエンバ、父親役はトニー賞ノミネート経験のあるデビッド・ギャリソンと、ベテランのミュージカル役者達だ。
作曲・脚本:JOHN KANDER
作詞・脚本:GREG PIERCE
監督:LIESL TOMMY
Vineyard Theatre
108 E. 15th St.
Running time: 1-hour 45-mins
Intermission: None
尺:1時間45分(休憩なし)
舞台セット ★★★★★
作詞作曲 ★★★★★
振り付け ★★★☆☆
衣装 ★★★☆☆
照明 ★★★★★
総合 ★★★★☆