On a Clear Day You Can See Forever 晴れた日に永遠が見える

On a Clear Day You Can See Forever
晴れた日に永遠が見える

オフ・ブロードウェイ
On a Clear Day You Can See Forever
晴れた日に永遠が見える
On a Clear Day You Can See Forever 晴れた日に永遠が見える

日本でも上演されたことのあるミュージカル『晴れた日に永遠が見える』について、米演劇関係者の多くが「音楽は素晴らしいのに…」と口籠る。バーバラ・ストライサンド主演による映画版もあり知名度の高い同作品だが、1965年の初演も含めて、これまでヒットしたことがない。そんな曰く付きのミュージカルが規模を縮小した上でオフ・ブロードウェイの小劇場に登場、夏の注目作となった。

あらすじ&コメント

ニューヨークを舞台にした物語は、予知能力や花を早く育てる不思議な力を持ったヒロインの女性と、彼女が受診する精神科医の男性を軸にしたもの。就職活動のためタバコを急いで止めなければならないヒロインに、精神科医は催眠を用いた治療を試みるが、その最中に彼女が突如語りだすのは前世のもう一人の自分のこと。催眠治療を続けるうちに精神科医に想いを寄せるようになるヒロインと、前世のもう一人の女性に心を奪われていく精神科医との心のすれ違いを描くラブ・ストーリー。

同作品が当初より抱える課題は、劇中で起こる超常現象の設定が曖昧で、説得力に欠けているところ。とはいえブロードウェイ初演の際は、劇中のタイトル曲がミュージカルの枠組みを超え大ヒットした。「On a Clear Day You Can See Forever(晴れた日に永遠が見える)」という美しく印象深いメロディーがヒットして独り歩きしたことで、およそ半年しか続かなかった初演だったが、作品の存在は知れ渡った。閉幕時には映画化の話がすでに決まっていたほどである。

ブロードウェイでは2011年のリバイバルに挑戦したのは、ミュージカル『春のめざめ』でその名を馳せ、今では日本の演劇界でもお馴染みの演出家マイケル・メイヤー。精神科を受診する主人公を同性愛者の男性に変更し、彼の前世が女性だったという設定にするなど、脚本に一風変わった変更を加えた意欲的なものだった。ハリー・コニック・ジュニア主演というのも話題となったが、結局は不評だった為、上演期間も短く終わってしまった。タイトル曲も含めたミュージカル・ナンバーはどれも聴き心地が良いものの、 問題を抱えたミュージカルというジンクスがさらに定着していった。

今回はオフ・ブロードウェイにある約150席の小劇場アイリッシュ・レパートリー・シアターでの上演となり、潤色・演出を手掛けるのは同劇場の芸術監督でもあるシャルロッテ・ムーア。彼女による今回のリバイバルの特徴は、様々な要素を徹底的に削り規模を縮小したこと。不必要な筋や登場人物は省かれ、出演者の数はブロードウェイ初演版の47人と比べて圧倒的に少ない11人となった。少人数のミュージシャンたちの奏でる演奏は、豪華な既存のキャスト盤のCDなどの録音に慣れた耳には物足りないのかもしれないが、劇場のサイズからは最適なのだと納得がいくし、初演から半世紀以上が経っても色褪せない楽曲の魅力を素直に引き出した舞台であることは確か。小劇場ならではの満足感を覚えることのできる舞台に仕上がっており、好調なチケットの売れ行きから期間限定公演は延長されたほどだ。簡素化を図ったことで、奥深さに欠ける少々単純明快なストーリー展開になっている。

水彩画の街並みなどをプロジェクターで映し出す温もりのある背景の映像や、 わずか数秒だけだが使用される盆舞台など、舞台装置には工夫が窺えた。そしてステージと客席の近さを生かした舞台構成も光る。劇場の建物の造りから、一階席の下手側を横切るように二階席への折り返し階段が設置されているが、その踊り場にアンサンブルを配置し楽曲を背景音楽のように聴かせる演出が作品の穏やかさを醸し出す。

主演のメリッサ・エリコはトニー賞の受賞歴こそないが、1993年に劇場街で上演された『マイ・フェア・レディ』で主役を張り注目を集めて以降、ミュージカル『上流社会』や『アムール(壁抜け男)』、そして『ホワイトクリスマス』などでヒロインを演じてきた逸材だ。今も透明感のある衒いのない歌唱で魅了する。閉演予定:9/6/2018

8・3・2018

メディア評

NY Times: 6
Time Out: 7
The Hollywood Reporter: 7

Irish Repertory Theater
132 W. 22nd St
尺:2時間15分(15分の休憩含む)

舞台セット ★★★★★
作詞作曲  ★★★★★
振り付け ★★★★☆
衣装 ★★★★☆
照明 ★★★★☆
総合 ★★★★★

Photo by Carol Rosegg

Photo by Carol Rosegg

Photo by Carol Rosegg

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