異性愛者の白人男性(上演終了)
あらすじ&コメント
舞台は父親と彼と一緒に住む長男の家に、次男と末っ子がクリスマスで遊びに来ているところから始まる。アットホームで楽しい雰囲気で会話は和やかに始まったホリデーだったが、ユーモアを交えた軽快なやり取りやダンスは、次第に家族同士の容赦ない意見の言いたい放題の場になり、彼らの負の局面が吐き出されていく。
長男はもう40歳位になるのに、競争社会に適応できず、バーバード大学を卒業しながらも、定職につかず事務処理のアルバイトなどをして、父親と一緒に自分の育った家に暮らしている。
次男は銀行で順調に昇進。高級車を乗り回し家族を養いながらも、白人男性が持つ特権を大いに利用してきたという自責の念にかられ、そういう価値観を批判する役となっている。
末っ子はゲイの様だがそれは明らかにされない。しかし青年時代(+に)苦しみ、心理セラピストに通うことで自分を取り戻したという過去を持つ。
一緒に中華料理を食べる家族4人だが、長男がその場で急に泣き出すところから ストーリーは急展開していく。長男を案じて心理セラピストを受けることを勧める末っ子に対し、次男は長男は白人の特権を利用せず、謙虚に他の恵まれない人たちに仕事のポストを渡している素晴らしい奴なのだ」と説く。
父親は長男との同居を喜んでいるものの、彼が社会に適応出来ないことを心配している。
言葉少ない長男は、最後に自分は競争が好きではなく、特権をあえて拒んでいるんで訳ではないと伝える。今まで彼を尊敬していた次男はそんな長男を「世の中に存在する意味のないただの社会の敗北者」と呼んで貶す。
最後に父親は長男に「私はまだ元気だから、今から父親の世話などに逃避してはいけない。君は社会に出て生産的な市民になるべきだ。ここから出て行きなさい」と言言う。行き場を失った長男を居間に残し、暗転する。
冒頭のトランスジェンダーや性的アイデンティティーや性的嗜好については本編では触れない。そんな性的こだわりについて批判する出だしもそうだが、本編でも「白人特権、白人の自責、ゲイとして生きる苦しみ、競争社会に馴染めない白人」など多くのテーマが盛り沢山に発信されている。ただそれらが、お互いに捩れ合う訳でもなく、直球と理屈で されるだけに終わっており、観客の心に伝わりにくい。
この劇作家はアジア人のYoung Jean Lee。アジア人がこのテーマに取り組んでいるのは興味深いが、白人特権という言葉自体は今、ブロードウェイでは流行りとも言える位、取り上げられることが多い。ちなみにハーバード大学に入るためのSATのスコアは、黒人は少なくていいのだが、アジア人は反対に白人よりも140点、黒人よりも450点高くないと入れない。
7.26.2018
Helen Hayes Theater
240 W. 44th St
上演時間:1時間30分(15分の休憩含む)
閉演予定日: 9/9/2018
舞台セット ★★★★☆
衣装 ★★★★☆
照明 ★★★★☆
総合 ★★★★☆
Photo by Joan Marcus, 2018
Photo by Joan Marcus, 2018
Photo by Joan Marcus, 2018
Photo by Joan Marcus, 2018