あらすじ&コメント
イスラエルに新しくできたアラブ文化センターから招待されて、イスラエルにやって来た警察楽団。舞台は、この8人がイスラエルの空港に降り立ったところから始まる。しかし、空港のバス・ターミナルで言葉が全く通じない。かたやアラビア語、かたやヘブライ語なのだからしかたない。そんな会話によくある話で、案の定、間違ったバスの切符を買ってしまう。やっとバスから降り立つと、そこはネゲブ砂漠にあるベイト・ハクティヴァという田舎町。本当の目的地は、ペタハ・ティクヴァ。カタカナにすると違いはわかるが、イスラエル人がこれを発音すると、観客にも私にも、そして音楽隊員にもその違いは聞き取れず、この二つの名前は舞台で繰り返される度に観客の笑いを誘う。音楽隊が戻るためのバスは、翌日まで出発しない。しかしこの田舎町にはホテルもない。しかたなく住民の好意に甘えていくつかのグループに別れ、カフェの女主人の家や民家などに泊まることになった。隊長以下複雑な人生を抱えた各々、そして彼らを受け入れる家にも、それぞれの事情を抱え、違う明日を夢見ずにはいられない人々がいて、その一つひとつの交流が心温まるストーリーとなっている。
音楽隊員達は、つたない英語でコミュニケーションをとろうとゆっくりと話す。しかし観ていてじれったいわけではない。なんだかほんわかとした空気で劇場全体が満たされ、ゆったりさが作品全体に流れる。
当たり役となったカトリーナ・レンク演じるカフェのエキゾチックで個性的な女主人ディナと、警察音楽隊の隊長役の超ベテラン男優トニー・シャルーブとのデュエットが、時に立ち止まり、時に逆戻りし、時に転びそうになりながら、それでもゆっくりと惹かれ合っていく二人の心情を唄い上げ、このミュージカルの一番の見所となっている。
音楽の方は文化が入り乱れるこの地を反映してペルシャ調、ジャズ・バラード調、ロック調などバラエティーに富んでいて面白い。
THE BAND’S VISIT
Ethel Barrymore Theater
243 W. 47th St.
上演時間:1時間30分(休憩なし)
舞台セット ★★★★★
作詞作曲 ★★★★★
振り付け ★★★★☆
衣装 ★★★★☆
照明 ★★★★★
総合 ★★★★☆

Photo by Matthew Murphy, 2017

Photo by Matthew Murphy, 2017

Photo by Matthew Murphy, 2017