あらすじ&コメント
幕が開き照明があたる前に、ベートーベンの「運命」の有名な最初のメロディが流れる。時は1993年。流星群がよく見える場所に住んでいる夫婦ノームとコーキーは、それを見たいというジェラルドとローラ夫婦を家に招待する。ノーム夫婦はどこにでもいそうなタイプの人達で、カウンセラーのおかげで安定した夫婦生活を送っているが、19年間の結婚生活は必ずしも相思相愛の毎日ではなかったことがうかがえる。そこにやってくるエネルギッシュでカリスマ性を感じさせるジェラルドとセクシー過ぎる位のローラは、実はノームとコーキーの仲を壊そうと企んでいるのだが、それを知らないこの夫婦は、ジェラルド達に振り回され、それぞれ誘惑されてしまい、ノームは何故か空から急に落ちてきた流星群のひとつに撃たれてしまう。そして、この芝居は「もしも」風に違うストーリーの展開が何パターンか同じ設定で繰り返されるのだが、ジェラルド夫婦の訪問の本当の目的は、流星群を見ることではなく、他の夫婦の結婚を破壊しに来るということをノームとコーキーが事前に知るパターンもあり、そこではジェラルドが流星群に撃たれてしまう。どちらのケースも、流星群に撃たれて胸に穴が開いてしまいながらも、二人とも生き延びるのだが・・・。そして、ジェラルドとローラの行動があまりに人間離れしているので、この夫婦が実は流星群に乗ってきた宇宙人でないか、と観客に思わせるが、そこまでストーリーは発展せずに、彼らは帰っていく。
スティーヴ・マーティンは大学で哲学を専攻していたが、その時に「不条理」の思想に興味を持ち、「世の中には、原因も結果もない。そこには理屈や合理性は存在しない」という考えが、彼に大きい影響を与えた。それが彼のコントに独特な味わいを持たせているのだが、この作品もそんな彼の世界感が反映されている。作品を通して笑えるジョークが散りばめられているが、残念なことに85分の芝居はジョークだけでは持たない。彼が役者の一人として出ていれば、その個性でなんとか乗りきれたのかも知れないが…。 1月21日、2018年 閉演予定。
Broadhurst Theatre
235 West 44th Street
上演時間:85分
舞台セット ★★★★☆
衣装 ★★★★☆
照明 ★★★★☆
総合 ★★★★☆
Photo by Matthew Murphy, 2017
Photo by Matthew Murphy, 2017