Torch Song トーチ・ソング(失恋を扱った感傷的な歌の意)(上演終了)

Torch Song
トーチ・ソング(失恋を扱った感傷的な歌の意)(上演終了)

演劇 ブロードウェイ
Torch Song
トーチ・ソング(失恋を扱った感傷的な歌の意)(上演終了)
Torch Song トーチ・ソング(失恋を扱った感傷的な歌の意)(上演終了)

作者はアメリカン・シアターの殿堂入りも果たしたハーヴェイ・ファイアスタイン。かの有名なミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール/La Cage aux Folles』(1984)でも脚本賞を受賞し、同じくミュージカル『ヘアスプレー』(2003)では 主演男優賞を受賞。ちなみに ミュージカル作品賞を受賞した『キンキー・ブーツ』(2013)でも脚本賞にノミネートされている。日本では映画『ミセス・ダウト/ Mrs. Doubtfire』(1993)で、主役を演じるロビン・ウィリアムの女装を手伝うお兄さん役で彼を覚えている人もいるだろう。他にも映画『インデペンデンス・デイ』(1996)など数多くに脇役として出演して高く評価されている。ちゃきちゃきのニューヨーカーでブルックリン育ちのユダヤ人の彼は、昔はコメディアン芸人やキャバレーで女装をして歌いながら生活費を稼いでいた。ゲイへの差別が厳しい時代からカミングアウトし、ゲイとして生きる困難と哀愁をコメディータッチで表現し続け、ゲイでない人々の心をも掴んで、今では脚本家、俳優、声優としてエンターテインメン界にその名を馳せている。

あらすじ&コメント

これはゲイへの差別と闘いながらも、人としての誇りを失わずに生きるアーノルドの「本当の愛と幸せ探し」の自叙伝的ストーリーである。バーで出会ったエドこそは「本当の恋人」だと信じた矢先に、自身がゲイだということを受け入れられないエドは女性と結婚してしまう。アーノルドが、その後出会ったアランとの幸せなひと時は、アランが夜街中で殺されて一瞬にして崩壊する。二人が養子として受け入れる準備をしていた16歳のデイビッドを、アーノルドは一人で受け入れた。そこにアーノルドの母親がフロリダから久しぶりに遊びに来る。眼の前でオープンにゲイの話をする息子を非難する母親に、アーノルドはこれが自分のそのままの姿だと怒り、大喧嘩になってしまう。しかしトコトン言い争う中で、アランが単にゲイということだけで後頭部をバットで殴られて殺されたことを母親は知り、夫を亡くした自身の喪失感と重ね合わせてアーノルドを優しく慰めるのだった。彼女はフロリダに帰り、一人部屋に残されるアーノルド。彼は妻と別れてもう一度一緒に住んでやり直したいというエドと、やっと自分の居場所を見つけたデイビッドと共に、普通の家族とは異なる形でも「愛し合う人たちに囲まれた小さな幸せ」をしみじみと感じるのだった。

1978年からオフ・オフ・ブロードウェイやオフ・ブロードウェイで上演された作品二つに一部足し、3部作として1981年に上演されたのが、この作品の原点となった戯曲『トーチソング・トリロジー/Torch Song Trilogy』と呼ばれた芝居だった。これは1982年にブロードウェイに移ってオープンし、1222回上演されるという成功を収め、日本でも数度上演されている。当時は若かったマシュー・ブロデリックがオフでは養子のデイビッド役に、1988年の同名の映画版においてはアーノルドの愛人役を務めた。ハーヴィー・ハーヴェイ・ファイアスタインは主役のアーノルド役を演じ、トニー賞の作品賞と演劇主演男優賞を受賞している。

今年2018年に現代の観客にふさわしいように加筆され2幕構成の 芝居としてオフ・ブロードウェイでデビュー。好評を得て9月にブロードウェイに移ってきた。今回の舞台では、アランを描く時間が著しくカットされていたことも要因かも知れないが、映画版とは随分と違い、マシュー・ブロデリックの演じた知性と男らしさをも感じさせる深みのあるアランが、シンプルで可愛く悩みのなさそうなただの美しい男性になっていたのは残念だった。アーノルド役は、テレビドラマ『アグリー・ベティ/Ugly Betty』(2006〜2010)で人気を得たマイケル・ユーリーに引き継がれ、彼のファンが観客にも多く居た。しかし映画版でハーヴェイ・ファイアスタイン自身が演じるアーノルドを見てきた者には物足りなかったかもしれない。デイビッド役のジャック・ディファルコはがっしりとし過ぎて、16歳には見えない。アーノルドとエドがデイビッドを子供として可愛がる設定が、3人の大人の男性に見え、不自然で危ない感じも受ける。ミセス・ベッコフ役(アーノルドの母親役)は、マーセデス・ルール/Mercedes Ruehl。『ロスト・イン・ヨンカーズ/Lost in Yonkers』(1991)でトニー賞の演劇主演女優賞を受賞。映画『フィッシャー・キング/The Fisher King』(1992)でアカデミー賞とゴールデングローブ賞の助演女優賞を受賞している。

演出家はモイセス・カウフマン/Moisés Kaufman。2015年にアメリカで最高峰の芸術賞と言われる全米芸術勲章(National Medal of Arts)を受賞し、当時のオバマ大統領よりメダルを授与されている。劇作家としての代表作は『ララミー・プロジェクト/The Laramie Project』(2000)で、彼が演出した『アイ・アム・マイ・オウン・ワイフ/I Am My Own Wife』(2004)はトニー賞の演劇作品賞を受賞している。

装置デザインはデイビット・ジン/David Zinn。トニー賞の装置デザイン賞を2回受賞『スポンジ・ボブ/SpongeBob SquarePants』(2018)、『ザ・ヒューマンズ/The Humans』(2016)。

衣装デザインはクリント・ラモス/Clint Ramos。『イクリプスト/Eclipsed』(2016)でトニー賞の衣装デザイン賞を受賞。

メディア評

NY Times: 8
Wall Street Journal: 7
Hollywood Reporter : 8

Hayes Theater
240W. 44th St.

上演時間: 2時間30分(15分の休憩含む)
閉演予定:2月24日2019年

舞台セット ★★★★☆
衣装 ★★★★☆
照明 ★★★★☆
ストーリー ★★★★★
キャスティング ★★★★☆
総合 ★★★★☆

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