Company カンパニー

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ミュージカル ブロードウェイ
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アカデミー賞1回、トニー賞8回、グラミー賞8回、ピューリッツァー賞1回、ローレンス・オリヴィエ賞1回、そして大統領自由勲章を受章したミュージカルの大御所ステファン・ソンドハイムが、昨年2021年11月26日、その輝かしい人生の幕を閉じた。作詞作曲家としてミュージカル界に大変革を起こしたニューヨーク生まれのこの巨匠は、晩年の住まいだったコネクティカット州の家で、近くの友人達と感謝祭のお祝いを楽しんだ翌日、息を引き取った。享年91歳であった。

あらすじ&コメント

その約二週間後に今回紹介する彼の名作『カンパニー』の再上演が、ブロードウェイでオープンした。この作品は1975年に創られたマンハッタンを舞台にしたミュージカルだ。主役である35歳の独身男性が、友人である5組のカップルによる不意打ちの誕生日パーティーで「そろそろ結婚したら」と勧められるところから始まる。

結婚に縛られたくないという気持ちが強すぎて、相手を深く愛すことができずに寂しくひとり葛藤する男性を描くこの作品を、3つのトニー賞、3つのローレンス・オリヴィエ賞を受賞しているメリアン・エリオットが演出した。彼女は主役 の独身男性 Bobbyを、Bobbieという女性に置き換えるという、斬新で勇気ある変更を加えた。このミュージカルが演じられた1970年代のころは、35歳の男性と言えば結婚して子供が2、3人いてもおかしくなかった時代だったが、今ならばそれを女性が演じるのが時宜に適うということなのだろう。劇中では結婚間近な友人カップルも、ゲイ同士となっている。同時に登場人物達が特権知識階級だった作品を、舞台セットや服装を中層階級風にして、より多くの人が親近感を持てる作品に仕上げている。ソンドハイムは生前、時代の流れに沿って作品が変容していくのは当然で、こういう作品もあって良いとエリオット氏を後押していたらしい。

主演を演じたのは『バンズ・ヴィジット(迷子の警察音楽隊)』でトニー賞を獲得したカテリーナ・リンク だが、彼女の豊かでありながら楚々としている表情が、人生を真剣に受け止められずに流されてしまうサラサラ感のある役柄を、とてもチャーミングな女性版ボビーにしている。ボビーの3人の恋人男性達の台詞も、原作では女性の台詞だったわけだが、性が違うだけでこちら側の受け止める気持ちが大きく違ってくるのに驚かされる。性と言うものがいかに本質的なものかを再認識させられた。

終幕で主役のボビーが歌い上げる「これが生きるということなのか(曲名:Make Me Alive)」は男性用に作られた曲なので、ソプラノのカテリーナの声では多少物足りないのだが、それでも作品全体を通して観れば、魅力的で親近感のあるボビーを生み出したリンクの演出は素晴らしい。
またトニー賞、オリバー賞、グラミー賞とそれぞれ2つづつ6つ受賞し、プラス、アメリカン・シアターの殿堂入りも果たした72歳のパティ・ルポンが、ジェニー役で出演していることにも触れておきたい。彼女目当ての観客も多く、これを逃したら今度いつ彼女を観れるかわからないという思いもあったのだろう。彼女が舞台に登場した時には大きな拍手が起こっていた。二幕目で彼女が名曲『昼食をする女性(有閑マダムを指す)』を歌ったときには、その貫禄に圧倒される。つい先頃亡くなったミュージカル界きっての巨匠による名作を、もう1人の大物が歌うその瞬間は、まさに歴史的な瞬間だったのかも知れない。
12/11/2021

Bernard B. Jacobs Theater
242 West 45th Street
公演時間:2時30分(休憩1回)
公演期間:プレビューは2020年3月2日にスタートしていたがオープンする前にコロナによって閉演。2021年12月9日に再開した。

舞台セット:9
作詞作曲:10
振り付け:6
衣装:8
照明:8
総合:9
Photo by Matthew Murphy
Photo by Matthew Murphy
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