Joy: A New True Musical ~ジョイ:真実の新しいミュージカル〜

Joy: A New True Musical ~ジョイ:真実の新しいミュージカル〜

オフ・ブロードウェイ ミュージカル
Joy: A New True Musical ~ジョイ:真実の新しいミュージカル〜
Joy: A New True Musical ~ジョイ:真実の新しいミュージカル〜

オフ・ブロードウェイで上演中のこの新作ミュージカルは、発明家で起業家の女性ジョイ・マンガーノの人生を描いている。家族を支えながら苦境に立ちつつも、その独創的なアイデアと行動力で「ミラクルモップ」*を発明し、1992年にテレビ通販QVCで紹介して一大成功を収めたことで特に知られている。その後も、同じ境遇にある主婦たちが家事や掃除で助かるような製品を次々と世に送り出してきた。実話をもとにしながらも十分に脚色を加え、2時間以上の上演時間を感じさせないエンターテインメント性の高い作品となっている。

あらすじ&コメント

ジョイのストーリーは、2015年にデヴィッド・O・ラッセル監督による映画『ジョイ』としても描かれている。このとき、本人のジョイは顧問(コンサルタント)として参加し、製品や販売手法に関する実際の知識や経験が反映されたと言われているが、物語や人物設定には大幅な脚色が加えられた。その後、2017年に彼女は自伝『Inventing Joy』を出版。本作は映画と自伝の両方を下敷きにしており、2022年にニュージャージー州ジョージ・ストリート・プレイハウスで初演され、今回満を持してオフ・ブロードウェイに進出していて、ジョイ自身は代表プロデューサーである。

ジョイ役は『Waitress』や『Falsettos』などで知られる実力派のベッツィ・ウルフで、その力強くも温かみのある歌声が光る。ジョイの母親役のジル・アブラモヴィッツ(69歳)は、家にこもってテレビばかり見ている老婆の姿をユーモラスに演じる。しかし、ジョイが特許を巡って戦う裁判所に真っ赤なドレスで現れ、娘を応援する曲を力強く歌い上げたシーンでは、観客を大きく沸かせた。エディ役は『Come From Away』などに出演したポール・ウィッティが務め、特許を巡ってジョイと法廷で争う相手として鋭さと威圧感を併せ持つ素晴らしい演技とウェスタン調のユニークな声を披露。チャール・ブラウンはQVCのエグゼクティブを演じ、躍動感のある演技で存在感を放った。

脚本はブロードウェイ・プロデューサーとしてトニー賞受賞歴を持つケン・ダベンポート。代表的なプロデュース作品にはKinky Boots』『The Play That Goes Wrong』『A Beautiful Noise』などがある。脚本家としては、オフ・ブロードウェイで数本、ブロードウェイでは『Gettin’ the Band Back Together

』を執筆している。作詞作曲はアナスタシア・バーニッジが担っており、エディやダンが中心となって、アンサンブルも共に歌うナンバーなどは、振り付けもなかなかで、もう一度聴きたくなる。演出はケイシー・ハッシュが手がけた。

舞台はジョイの10代のころ、すでに発明好きだったという短いシーンから始まり、その後、経済的に不安定なミュージシャンの夫、娘、そして自分の両親と共に暮らし、妻・母・娘として家族を支えながら航空会社に勤務する忙しい日々を描く。しかし、ある日航空会社を解雇され、これが大きな転機となった。家族との葛藤を抱えながらも、ミラクルモップ誕生へと突き進むジョイ。QVCの出演に緊張しまくってしまうジョイや、ビジネスの駆け引きのシーンなどは見どころだ。最後には、実際のジョイの映像がプロジェクションされ、彼女がその後もハガブル・ハンガーなどのヒット商品を開発し続けたことが映像を通じて伝えられる。

ちなみに現在、ジョイ・マンガーノ(現在69歳)は、今だに発明家兼起業家としてテレビ通販やQVCで活躍しており、このミュージカルの代表プロデューサーでもある。また、自身の経験を活かしてモチベーションスピーカーやビジネスコンサルタントとして、若い起業家や特に女性発明家の支援に力を注いでいる様だ。

観客層には若い女性が多く、事前に楽曲の一部がSNSで公開されていたことも影響しているようだ。公演後には制作側に選ばれた約30人の観客が残り、舞台の感想を述べる時間が設けられた。さらに客席には観る前・休憩中・観た後の感想を書くアンケートが配られ、観客を積極的に巻き込む姿勢が印象的だった。混乱するかもしれないので説明しておくと、ジョイの両親は離婚しながら娘と一緒に住んでいるが、父親はミラクルモップに投資する裕福な女性と交際している。テンポが早く分かりにくい部分もあるが、理屈抜きに楽しめる作品であり、アンサンブルのダンス、歌い上げるシーン、静かな場面がバランス良く配され、オン・ブロードウェイを観たかのような満足感を与えてくれる。

<更に面白くなる追加情報>
*アメリカ人なら、ミラクル・モップを知らない人はいない。当時、主婦はモップで床を掃除した後、手でモップ部分を洗ったり絞ったりするのが普通だった。ところがミラクル・モップは、モップ部分に触れずにポールの操作だけで絞れる仕組みを備え、さらにモップ部分を取り外して洗濯機で洗えるようにした画期的な製品だった。累計販売本数は推定2,000万本以上。続いて発売されたハンガーも10億本以上売れ、ジョイ・マンガーノの現在の純資産は約7,000万ドル(105億)とされている。なお彼女は現在、ミラクル・モップの所有権は持っていないが、ブランドは継続され、改良版や関連製品が同名で展開されている。

このミュージカルの制作費を補うためか、現在、マンガーノ氏はロングアイランドの9エーカー(約3.64ヘクタール)の大邸宅を競売にかける予定だ。入札開始額は400万〜700万ドルと予想されている。この邸宅には、9つの寝室や大広間のほか、屋内プール、ジム、ワインセラー、テニスコート、遊歩道、石造りの庭園滝などが備わっているという。彼女は他にも複数の不動産を所有していると思われるので、舞台制作のために投資資金を取り崩すのではなく、すでにある固定資産を現金化する道を選んだのだろう。(8/7/2025)

Laura Pels Theater
111 W 46th St, New York, NY
上演時間:130分(15分休憩一回)
公演期間:2025年720~8月17

舞台セット:8
作詞作曲:9
振り付け:8
衣装:7
照明:7
キャスト:8
総合:8
@ Joan Marcus
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