Mrs. Doubtfire ミセス・ダウト

Mrs. Doubtfire
ミセス・ダウト

ミュージカル ブロードウェイ
Mrs. Doubtfire
ミセス・ダウト
Mrs. Doubtfire ミセス・ダウト

1993年にヒットした亡ロビン・ウィリアムズ主演映画で広く知られている『ミセス・ダウト』の舞台化作品で、演出は、トニー賞を8回ノミネートされて4回受賞したベテラン、ジェリー・ザックス。 この作品は2020年3月に開演したのだが、たった3回でロックダウンで公演中止。昨年12月に9か月ぶりに再オープンしたと思ったら今度はオミクロン株の流行で客足が遠のいてしまった。現在1月10日から4月9日までの休演予定と公表している。

あらすじ&コメント

主人公のダニエルは、尋常ではない創作能力を持ち備えた俳優で、家庭では三人の子供を愛して止まない父親だ。しかし本業ではさっぱり売れない。それで大黒柱でしっかり者の妻は、ついに離婚に踏みきる。
経済力もなく親権を失ったダニエルだったが、子供達が恋しくてたまらない。そこで家政婦(ミセス・ダウトファイア)に変装して子供たちの面倒をみる、という名案(迷案)を思いつく。おかげで慣れない食事や掃除に右往左往しながらも、子供3人と楽しい時間を過ごせるようになった。元妻もミセス・ダウトに多大な信頼を寄せている様だ。しかし独身となった元妻に言い寄る男性が出てきて‥‥‥。

映画で有名になった作品は、集客のための資金調達が比較的容易になる。しかし映画の二番煎じと思われるのは否めず、ロングヒットは難しい。最近ではトニー賞を獲得しながらもパンデミック前に千秋楽を迎えてしまった『トッツィー』があるし、『ハリー・ポッターと呪いの子』もハリポタ世代の観劇が終われば、その後の集客は望めないだろう。 この作品はどうなるだろうか。

さて本作品の主演はロブ・マクルーア。15年前のミュージカル『チャップリン』での名演技が印象に強く残っている。動作の真似だけでなく、ロブ・マクルーア独自の解釈によるチャップリンが、生きいきと描かれていた。彼は深いところから出てる温かさや哀愁を感じさせる役者で、この作品ではトニー賞にノミネートされていた。その後『ハネムーン・イン・ベガス』でも素晴らしい演技で多くの観客を魅了していた。今回の作品は彼にとって『ビートルジュース』に続くアクション・コメディとなる。ロビン・ウィリアムスが有名にした掃除機のシーンなど、ロブ・マクルーアだからこそ出来る舞台演技に思わず唸らされる。

作品ではロブ・マクルーア扮するダニエルが、ミセス・ダウトに何度も早替わりする。そのためのシリコンゴム製のマスクが準備されていて、素早くお婆さんになっていた。世の劇評中には、そのマスクの出来映えを褒めているものもあった。しかし舞台には、舞台特有の表情の表現手法があるのに、それがゴム越しになって減殺されていた。精巧なマスクなど小道具制作の技術発展が大切なのは言うまでもない。だが芸術の分野でどこまでそれに頼るかは、創作者の意図を見極める必要がある。役者の「表情」がいとも簡単に切り捨てられてしまっては、元も子もなかろう。そういえばミュージカル『キャッツ』は、映画化にあたってCGを駆使した結果、あまりに猫にそっくりで、観客が気持ち悪るがって悪評だった。

全体的として相当にいいコメディー・ミュージカルに仕上がっている。ダンスも飽きの来ないように適宜取り入れられて、キレのいい振り付けとなっている。また家族の絆を伝える場面ではこちらにそれがヒタヒタと伝わってきて、見がいのあるシーンとなっている。

ちなみに英語のタイトルにあるダウトファイアというのは英国から発祥した苗字で「勇敢さ、強さ、男らしさ」などの意味がある様で、そこにも遊びが感じられる。
12/10/2021

Stephan Sondheim Theater
124 W. 43 Street
公演時間:2時間35分(15分休憩一回)

舞台セット:7
作詞作曲:6
振り付け:8
衣装:7
照明:7
総合:9
Photo by Joan Marcus
Photo by Joan Marcus
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