Paradise Square パラダイス・スクエア

Paradise Square
パラダイス・スクエア

ミュージカル ブロードウェイ
Paradise Square
パラダイス・スクエア
Paradise Square パラダイス・スクエア

1863年、南北戦争が激しくなった頃の話である。ニューヨークのファイブ・ポイントと呼ばれていた地区は、アイルランドからの移民と南部からの黒人が住む、貧しいながらも活気溢れるスラム街だった。そこに毎夜人々が集まって賑わう、ダンスホール(売春宿)を併設するバーがあった。その名はパラダイス・スクエア。経営するのは祖父が奴隷だったネリーと、アイルランド移民の夫ウィリーだった。しかし夫ウィリーは北軍に志願して出征。残されたネリーは1人で店を仕切っていた。ある日その店にウィリーの甥がアイルランドからやってくる。彼は無類のダンス好きなのだが、奇遇にもちょうどその日、ダンスが得意な南部の若人が奴隷生活から逃れてやって来る。

あらすじ&コメント

タップダンスの起源にはいろいろな説がある。しかし間違いないのは、アイルランド人のダンスと黒人のダンスが融合して大きな発展をみたことで、まさにこのパラダイス・スクエアで踊られることになるダンスは、その始まりを彷彿とさせる。そして当時、主に二級市民として虐げられていたアイルランド系移民によって起きた二ューヨーク徴兵暴動と呼ばれる騒乱を、ストーリーの背景に起きながら、話は展開して行く。まるでニューヨークの歴史を垣間見ているような楽しさがある。ただ多くのストーリーラインが錯綜するため、焦点を合わせられず欲求不満になるかも知れない。あたかもビュッフェであまりに多くの食種に手を出しすぎて、どれが美味しいのか分からなくなってしまうような感じだ。

それにしても主演女優のジョアキーナ・カラカンゴは凄い。彼女はテレビや映画にも出ており、ミュージカル『スレーブ・プレイ』では トニー賞にノミネートされている。本作品二幕目最後に歌い上げるソロ「Let it Burn(訳:燃え上がれ)」では、スタンディングオベーションが起きていた。しかし凄いのは彼女だけではない。彼女に続く助演女優、助演男優らの歌唱力も尋常ではない。これほど迫力のある歌声を味わえるミュージカルに出会う機会は滅多にない。オープニングから歌と共に燦燦と浴びせ掛けられるエネルギーに圧倒される。ただ終始ハイテンションなので、そろそろ一息入れたいという気持ちになる。構成に工夫をして、明と暗、動と静、熱と冷、強と弱をもっと意識しても良かったかも知れない。

振付はオペラ、映画、テレビ、舞台でも活躍して多くの賞を受けているビル・T・ジョーンズ。楽器を奪われた奴隷が代わりに体を叩いてリズムを生み出すハムボーンや、アイリッシュダンスを元にした素早い動きのあるステップを取り入れた振り付けも、見応えがある。

しかし今は、ダンスやストーリーよりも、ジョアキーナ・カラカンゴの力強く輝く滑らかな歌声をもう一度聴きたいという気持ちが募ってくる。
05/24/2022

Ethel Barrymore Theatre
243 W. 47th St., New York, NY
公演時間: 2時間35分(休憩1回)
公演期間:2022年4月3日(プレビュー2022年3月15日)〜

舞台セット:8
作詞作曲:6
振り付け:7
衣装:6
照明:7
総合:8

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