シャックト
あらすじ&コメント
舞台は祖先代々トウモロコシを育ててきた小さい村。他の世界との繋がりを絶って代々、誰にも知られずひっそりとトウモロコシを育てながら、楽しく、明るく生きている。ところがこの村に大問題が発生する。大切なトウモロコシの元気がなくなり、収穫が出来なくなりそうなのだ。そこで結婚間近だったメイジーが、村の未来を担って外の世界へと踏み出る。解決法を探すため、フロリダのタンパの街に向かったのだ(ここがマイアミでないところも笑える)。 彼女はそこで、トウモロコシの病気を治してくれる医者を見つける。しかしそれは彼女の早とちりだった。実はその男、医者ではなく「女性の皮膚を美しくします〜」と標榜してニセ化粧品を売るペテン師だったのだ。ちなみに皮膚にできる魚の目のことを英語でCornと呼ぶのだが、それはトウモロコシのCornと同じスペルなので、ポスターを見た彼女は、彼こそトウモロコシの病気を治す医者だと勘違いしたのだ。その上彼女は、婚約者が村にいるのにもかかわらずこの男と恋に落ち、村に連れて帰るのだった。
『Mean Girls』でトニー賞にノミネートされたグレイ・ハンセンと、ブロードウェイは初めてのアッシュリー・ケリーがナレーション役を勤めている。メイジーの従姉妹ルールー役のアレックス・ノウェル(Alex Norwell)によって歌われる 「Independently Owned」は、迫力満点。この曲名、取締役や投資家のいない会社のことを指すビジネス用語だが、ここでは彼女が営むコーン・ウィスキーの会社のことだけではなく、自分自身のことも歌っている。「私は誰にもコントロールされず、自由に自分で全てを決めている女性よ! 男性の為に生きるのは似合わない」という歌詞。ところがルールーを演じているアレックスは女装している男優なので、強い女性を謳歌するのはちょっと皮肉だ。ともかく彼は、トニー賞の助演男優賞にノミネートされた。ちなみにタイム誌が2022年に選んだ「今年の女性12人(Women of the Year)」の一人は男性として生まれ、8年前から女性ホルモンを打ち始めた女優だった。
ホイットニー・ヒューストンもそうだが、黒人歌手の多くは小さい頃から教会でゴスペルを歌っているからだろうか。鍛え上げられた歌唱力にはいつも脱帽する。あと、頭も体もちょっと弱いケビン・カフーン(Kevin Cahoon)のひょうきんな演技も、そのユーモラスなセリフにぴったり合っている。
本作品は、今年2023年の作品賞をはじめとする9つのトニー賞にノミネートされ、ミュージカル部門で現在第2位の数字となっている。ただ観劇は、言葉遊びや駄洒落による笑いが殆どなので、米国の慣用句や俗語に慣れていないと、フルにその面白さを味わえないかも知れない。その判断用に、休憩時にバーで提供されていた黄色のドリンク・メニューの写真を添付してみた。もしこれが面白いと思えたなら、楽しめること請け合いだ。(4・19・2023)
Nederlander Theater
208 West 41th Street
公演時間:2時15分(休憩1回)
公演期間:2023年4月4日~