Sweeney Todd: THE DEMON BARBER OF FLEET STREET スウィーニー・トッド〜フリート街の悪魔の理髪師〜

Sweeney Todd: THE DEMON BARBER OF FLEET STREET
スウィーニー・トッド〜フリート街の悪魔の理髪師〜

ミュージカル ブロードウェイ
Sweeney Todd: THE DEMON BARBER OF FLEET STREET
スウィーニー・トッド〜フリート街の悪魔の理髪師〜
Sweeney Todd: THE DEMON BARBER OF FLEET STREET スウィーニー・トッド〜フリート街の悪魔の理髪師〜

無実の罪を着せられて家族を奪われた男が、恨みと復讐の念から狂気にはしり、殺人を繰り返すのがこの作品『Sweeney Todd スウィーニー・トッド』だ。ブロードウェイ・ミュージカルとしては珍しく血生臭い。随分前になるがティム・バートンが映画化し、ジョニー・デップがアカデミー賞主演男優にノミネートされて有名だが、元々は1979年、故ソンドハイムが60歳の時にブロードウェイ公演して、8部門でトニー賞を獲得したミュージカルの名作だ。今回が3度目のリバイバルとなるが、1番の注目は主演のジョッシュ・グローバン(Josh Grovan)だろう。

あらすじ&コメント

ご存知のとおり彼は、デビュー当初から聴衆の心を掴み、最初の4枚のソロアルバムがすべて100万枚突破のゴールデンディスクに輝いたばかりか、2022年の時点で4枚併せて2500万枚以上を売り上げた当代きっての人気歌手だ。映画ではジョニーデップが、スウィーニー・トッドの壊れた人格と哀愁を巧く表現していたが、ジョッシュ・グローバンが若い頃俳優志望だったとはいえ、クローズアップに頼れない舞台では、まだまだ伸びしろのある演技に留まっていた。しかし、その澄んだ声と歌唱力に、どの曲も「短か過ぎ」と感じるほどうっとり聴き入ってしまった。

ファンの方ならご存知かも知れないが、彼のデビューのきっかけが面白い。1999年、グラミー賞でセリーヌ・ディオンとデュエットで歌う予定だった大御所の盲目テナー歌手アンドレア・ボチェッリが、体調を崩してリハーサルに来れなくなってしまった。プロデューサーのデイビッド・フォスターが以前あるイベントで聴いたジョッシュの声を、思い出したらしい。それまでは無名の歌い手だったジョッシュに電話をする。練習する時間もないことに戸惑い、最初はやりたがらなかったジョッシュだったが「突然のことで君しかいない」と説得される。彼はその時若干17歳。それも元々可愛い顔立ちなので、当時は12歳くらいにしか見えなかったそうだ。すぐに駆けつけた劇場の入り口でも警備員に止められ、何とか中に入ってからも関係者の子供だろうと、誰も彼を気にも止めなかった。それでオーケストラ席の隅に座っておとなしくしていると、ステージ・マネージャーの怒鳴る声が聞こえてくる。「アンドレアの代理はまだ来ないのか?!」と。そこで恐る恐る彼が「僕です。その代役は僕です。30分前からここにいます。」と言ったもんで、皆「え〜っ、この子が〜??」と半信半疑で彼を眺めたらしい。いよいよ緊張し始めるジョッシュを見たセリーヌは、一目で母性本能をくすぐられ、「可哀想に、この子。」と思ったそうだ。彼はさっそく舞台に上げられ、楽譜を渡される。そしてオーケストラが曲を奏で始める。セリーヌがスタートし、続いてジョッシュのパートとなる。しかしそこで、セリーヌ・ディオンだけでなく、オーケストラ団員やそこにいた関係者等全員が「エッ!」となった。その幼い口元からほとばしる美しい声と成熟した感性に、皆肝を潰したのだ。後日「楽譜を持っている手が震えて仕方がなかった」と、ジョッシュは語っているが、セリーヌも、どうやらそれに気付いたのだろう。歌いながら彼の手を握ってあげる。その現場にいたグラミー賞司会者だった大御所コメディアン、ロージー・オドネルは、早速自分の人気のテレビショーに彼を招いた。そこで彼は大ブレイクしたのだった。

さて劇中でスウィーニー・トッドに惹かれて彼の殺人を助けるラヴィッド夫人を演じるのは、トニー賞受賞女優で映画やテレビで活躍中のアナレイ・アシュフォード。彼女が演じるラビッド夫人は、性的関心をストレートに表現する女性を演じている。楚々としていて可愛らしくコミカルに立ち回りながらも、大人の雰囲気を醸し出す数少ない女優だ。セクシーなことをしても肉感的にはならず、押しつけがましい処のない自然な演技が、誰をも惹きつける。スウィーニー・トッドの仲間アンソニー・ホープを演じたのは、作曲家兼プロデューサー兼歌手兼男優のジョードン・フィッシャーだ。ビデオ・ゲームも大好きらしい。そんな如才無く何でもこなす彼が、スウィーニー・トッドの娘に人目惚れする正義感が強くて純粋な青年アンソニー・ホープを演じるのは、少々無理だったかも知れない。 今回のリバイバルでは、オリジナルで殺人が行われる度に流れるという鋭い汽笛のような効果音が削除されていると、多くの劇評家が指摘していた。しかし美しい「ジョアンナ」の曲がゆっくりと流れる中、それとは不釣り合いな殺害が行われるところが、恐ろしさを倍増させるので、汽笛を省いたのは良いチョイスだったと思われる。

一昨年亡くなったソンドハイムだが、彼の作品は去年『カンパニー』がトニー賞のベスト・リバイバル・ミュージカルを受賞している。そして今シーズン、トニー賞ではこの『スウィーニー・トッド』と、やはりミュージカルの『Into The Woods イントゥ・ザ・ウッズ』がノミネートされている。またソンドハイムの唯一の失敗作と囁かれていた『Merrily We Roll Along』が今シーズン、オフで大成功し、既に来年のブロードウェイ公演が決まっている。ソンドハイム亡き後も彼のミュージカルは、ブロードウェイで輝き続けている。
(4/1/2023)

The Lunt-Fontanne Theatre
205 West 46th Street
公演時間:2時15分(休憩1回)
公演期間:2023年3月26日~

舞台セット:9
作詞作曲:10
振り付け:7
衣装:7
照明:9
キャスティング:9
総合:9
@ Matthew Murphy and Evan Zimmerman
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