プロム
あらすじ&コメント
一時期、人気を博したブロードウェイの俳優達4人は、インディアナ州のある田舎町で、PTAがレズビアンの女子高生エマのプロム参加に反対していることを知る。そこで彼らはこの好機を利用し、小さな街の物議を醸す様な出来事に抗議してプレスに大々的に取り上げられれば、自分達の名は知れ渡り仕事も入ってくる、と考えた。すぐさまこの田舎町に乗り込むが、彼らの派手な格好は、この街には全くそぐわない。俳優4人を率いるのは、若い頃には人気を馳せた女優のディーディー。演じるのは2019年のトニー賞に主演女優としてノミネートされたベテラン女優ベス・リーベル。(あらすじのネタバレ。女子高生のエマは自分がレズビアンであることを隠していなかったが、ガールフレンドのアリッサはまだカミングアウトしていない。実は、彼女の母親というのが、同性愛者のプロム参加を阻止しようとしているPTAの代表者だったのだ。アリッサにカミングアウトを迫るエマ。そしてディーディーらは、最初は自分勝手な理由でこの田舎町に来ただけだったが、傷つくエマを慰めたり、そこの住民の心に触れていくうちに、富と名声だけを追っていた為に忘れてしまっていた「人らしい生き方」を次第に見つけていく。)
ゲイを対象にする作品が圧倒的に多いブロードウェイで新たなレズビアンの登場だ。しかしブロードウェイの劇場の世界と、小さな田舎町の世界という2つの全く違う生活感が面白おかしく描かれ、ストーリーの展開自体は「悪と善が対立した上で、善が勝つ」というシンプルで微笑ましいコメディー・ミュージカルといった仕上がりになっており、誰でも楽しめる。
レズビアンの女子高生エマを演じるのは、2008年に当時16歳で『春の目覚め/Spring Awakening』にてブロードウェイにデビューしたケイトリン・キンヌネン。エマはちょっと冴えない小太りで不器用で、美人ではないし個性的アーティスト風でもない。彼女の存在が薄く見えるのはケイトリンの力不足なのか、エマのキャラの設定なのか、どちらとも言い難い。ブロードウェイがエンターテインメントとしてのビジネスである以上、主人公にもう一つ何か魅力を埋め込んでもらいたかった。所謂「口紅のレズビアン」とアメリカでは呼ばれているお洒落なレズビアンでも良かったかも知れない。
この舞台にはフィナーレで、エマとアリッサのキスシーンがある。プロムのキャストが2018年感謝祭のメイシーズのパレードでパフォーマンスをした際の演目でも女性同士のキスが含まれていた。パレードはTV放送されて、ソーシャルメディアでは大きな反応があったが、ネガティブなものは予想していたより少なかったようだ。同作品はトニー賞7つの部門でノミネートされたが、売り上げは、今年ノミネートされた5作品の新作ミュージカルの中では中間くらいを走っている。5月の収益は6500万円/週を超えており、オープンしてから7ヶ月、適度に利益をあげている。2020年9月にはネットフリックスで映画版が公開される予定だ。
4/23/2019
Longacre Theater
220 W. 48th St.
上演時間:2時間15分 (休憩一回)