Titaniqueタイタニック

Titanique
タイタニック

ミュージカル ブロードウェイ
Titanique
タイタニック
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『Titanic』ではなく『Titanique』とフランス語風にしているところが味噌の本作は、1997年のブロードウェイ・ミュージカル『タイタニック』とは別物であり、ジェームズ・キャメロン監督による同年の映画『タイタニック』をパロディ化したコミカルなジュークボックス・ミュージカルである。

本作は、セリーヌ・ディオンの主題歌『マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン』や『愛の記憶』などのヒット曲を含む約20曲を用い、再解釈・編曲された楽曲がソロ、デュエット、アンサンブルで歌われ,コミカル、かつエネルギッシュなアレンジが施されている。

ストーリーは、セリーヌ・ディオンが現代のタイタニック博物館のツアーに乱入し、自らが沈没事故の生存者であると主張するところから始まって、ジャックとローズの恋愛を誇張とユーモアによって再構築していくという設定だ。

あらすじ&コメント

本作は2017年にロサンゼルスで一夜限りのコンサートとして誕生し、2018年にニューヨークのキャバレーで上演、2022年6月にオフ・ブロードウェイの小劇場で本格的にスタートした。その後、デリル・ロス・シアターに移り、約3年間のロングランを記録した。

国際的にも、ウェストエンドをはじめ、オーストラリア、カナダ、シカゴ、パリなどで上演されており、熱狂的なファン層と批評家の支持を獲得している。リピーターの多い、いわゆるカルト的人気を持つ作品であり、今回のセント・ジェームズ・シアター公演は限定16週間の上演となっている。

脚本はタイ・ブルー、マーラ・ミンデル、コンスタンティン・ルスーリの共同創作であり、ミンデルとルスーリはオフ・ブロードウェイ版のオリジナルキャストとして出演もしていた。

ブロードウェイ版ではこれだけのセリーヌ・ディオンの楽曲を使用していることから、権料は相当なものと想像される。そのためか、舞台装置や照明は簡易なコンサート・スタイルになっており、背景にバンドが配置され、場面転換に合わせたセットの変化はない。

ちなみにタイトルは、『Titanic』とは別物であることを示しつつ、同作を踏まえていることも明確にするための言葉遊びであり、フランス語圏のケベック出身であるセリーヌ・ディオンのイメージを軽くなぞったものとも受け取れる。

出演者の中で特に歌唱力が際立っているのは、不沈のモリー・ブラウン役を演じるデボラ・コックスである。彼女は1990年代に「Nobody’s Supposed to Be Here」などのヒット曲で知られるR&Bシンガーであり、その力強く安定した歌唱はホイットニー・ヒューストンを彷彿とさせ、本作に確かな存在感を与えている。

ローズ役のメリッサ・バレラは本作がブロードウェイ・デビューであり、演技面ではベテランに及ばない部分もあるが、その愛らしさと初々しさは印象に残る。全体としてはスター性に依拠するというより、実力派キャストによるアンサンブルで成立している作品である。

劇中では、船長補佐やローズの母親がいずれもゲイとして描かれ、セリーヌ自身もそれを思わせる発言をするなど、LGBTQ文化に根ざしたユーモアが多用されている。作風としては、『ル・ポールズ・ドラァグ・レース』に見られるような、誇張と過剰さをあえて楽しむ劇風のものと言える。性的なユーモアが多いためファミリー向けの作品ではないが、LGBTQの観客層やその支持者を中心に支持を集めていると考えられる。

なお、2025年のローレンス・オリヴィエ賞では「最優秀新エンターテインメント/コメディ作品賞」(トニー賞には存在しないカテゴリー)を受賞し、船長補佐役のレイトン・ウィリアムズも助演男優賞を受賞していることから、本作がカルト的人気だけにとどまらない成功を収めていることもうかがえる。

映画『タイタニック』という誰もが知る物語と、セリーヌ・ディオンのヒット曲という強力なポップ資源を用いながら、それらを再現するのではなく、あえて誇張と逸脱によって再構築する点に特徴がある。いわば、記憶として共有された「名作」を、過度な表現を楽しむキャンプ的な演出によって解体し、再び娯楽として立ち上げた作品である。ロングランを記録してきた理由は、その行き過ぎた表現と軽やかさが、一部の観客にとっては一種の解放として機能しているからだろう。

*セリーヌ・ディオン
2022年に非常に稀な神経疾患であるスティッフパーソン症候群であることを公表し、ツアーを全面キャンセルした。しかしその後、2024年のパリ五輪開会式でサプライズ出演を果たし、多くのファンに希望を与えた。本人は「強くなっている」「再び歌える状態に戻りつつある」と語っており、2026年秋にはパリでの公演による本格復帰が予定されているとされる。この疾患は現時点で完治が難しいとされており、現在も闘病と復帰の途上であると想像される。本作におけるセリーヌ像は、誇張されたコメディ的なディーヴァとして描かれている。現実の彼女の状況との落差が大きいからこそ、観客はそれを一種のフィクションとして軽やかに受け止めることができるのだろう。

*『マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン』
この曲についてセリーヌは当初、十分な手応えを感じておらず、「この曲でいいのか」という疑問を抱いていたらしく、彼女が軽い気持ちで録音したデモ音源が、そのまま映画に採用されたと言われている。作曲はジェームズ・ホーナーによるものであるが、当初ジェームズ・キャメロンは映画に歌詞の入った曲を使用する意図がなかった。しかしジェームズが制作したセリーヌのデモ音源を聴いて方針を変え、最終的に主題歌として採用されることになった。結果として本曲は、グラミー賞、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞を受賞する世界的メガヒットとなり、セリーヌ・ディオンの代表曲となった。

(4/11/2026)

St. James Theatre
246 West 44th Street, New York, NY 10036
公演期間:2026年4月12日〜7月12日(限定16週間)
上演時間:約100分(休憩なし)

舞台セット:7
作詞作曲:9
振り付け:7
衣装:7
照明:7
キャスト:8
総合:7
@ Evan Zimmerman
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