「ワン・ナイト・イン・バンコク」という世界的ヒット曲を生んだ 『チェス』が、1988年以来初めてブロードウェイでリバイバルを迎えた。 ティム・ライスの原案と作詞、ABBAの ベニー・アンダーソン と ビョルン・ウルヴァース が作曲・作詞を手がけたポップロック・ミュージカルで、愛、忠誠、政治的操作、そして「個人 vs 国家」というテーマが、チェスをメタファーとして用いながら、勝敗を超えた人間ドラマとして描かれる。 舞台は、1979年頃から1980年代初頭、冷戦時代に行われたチェス選手権で、決勝戦に残った米国とソ連の代表者と、彼らの間に挟まれた女性との三角関係を背景に、国家の威信、CIAやKGBの陰謀、亡命なども織り込まれ、チェス試合が男同士の対決、そして代理の冷戦戦争として描かれていく。 『春の目覚め』でトニー賞を受賞した演出家 マイケル・メイヤー と、エミー賞受賞作家 ダニー・ストロ...[Read More]
『The Seat of Our Pants*』は、イーサン・リプトンが、80年以上前に発表されていた『The Skin of Our Teeth(首の皮一枚で助かる)』を現代風に脚色し、ミュージカル化した新作である。演出は、イーサンと長年にわたり協働を重ねてきた演出家リー・シルバーマンが務めた。 5000年にわたる人類の存亡を描く風刺劇で、アントロバス家族が氷河期、大洪水、戦争という3つの終末的災害から、かろうじて生き延びるさまが、ユーモアと絶望で描かれている。作品はメタシアター的な要素を含んだコメディで、自己言及的な笑いを特徴としている。 開幕から約2週間時点で興行収入は150万ドル、平均稼働率85%を記録し、11月30日の千秋楽は人気を受けて12月7日まで延長された。
桂サンシャインは、2016年にセントラル・パークで開催された「ジャパン・デー」にゲスト出演し、観客を大笑いさせて拍手喝采を受けていたのを覚えている。屋外の開放的な空間で、しかも立ち見の観客が多い中、彼は大勢の観衆の集中を最後まで保ち続けていた。その後も世界各地を巡る機会を増やし、落語という形式を国境を越えて英語で紹介し続けてきた。そして、ここ数年は、ほぼ毎月一度のペースでアメリカを訪れ、ニューヨークのオフ・ブロードウェイ劇場で舞台に立っている。 桂サンシャインは、落語史において極めて特異な位置を占める存在だろう。外国人として史上二人目の真打であり、しかもこの100年ほどの間で誕生した唯一の例だという。そして、彼の落語は、「異文化紹介」や「エキゾチックな伝統芸能」として消費されがちなこの語りの芸を、現在進行形のものとして、海外の観客にも親しまれる演劇表現として提示している。
戯曲『ART』はトニー賞最優秀戯曲賞を受賞した名作コメディであり、本公演は1998年以来となる初のブロードウェイ・リバイバルである。 フランスを代表する現代劇作家ヤスミナ・レザによって書かれた作品だが、何と言っても今回最大の注目点は主演の3人だろう。ニール・パトリック・ハリス、ボビー・カナヴェイル、ジェームズ・コーデンという有名スター3人が揃って主演することが、5月に発表された同時にチケットは即完売した。 2025年12月初旬時点で興行収入1,950万ドル超、平均稼働率98.68%を記録し、限定公演ながら2026年トニー賞の最有力候補と目されている。
米国の地方劇場を代表する存在として有名なシカゴのステッペンウルフ劇場が、多くの賞を受賞してきた女優ローリー・メトカーフのために、COVIDの中、特別に委嘱した戯曲。長年離れて暮らして疎遠になっていた叔母と甥の間の感情のすれ違いや距離感が、時間とともに変化していく過程が丁寧に描かれている。 マッカーサー天才賞受賞劇作家で、今までオフ・ブロードウェイやリージョナル・シアターで評価を確立してきたサミュエル・D・ハンターのブロードウェイ・デビュー作だ。 2024年6月にシカゴで初演されると「痛々しいほど美しい」「ローリーのキャリア最高傑作」と批評家らに絶賛され、2025年秋、満を持してブロードウェイにやってきた。 全キャスト4人はそのままシカゴから移動しており、限定19週間公演の予定だが、現在2025年12月6日時点、興行収入330万ドル超、平均稼働率79%を記録し、今シーズン2025−20...[Read More]
2024年にウエストエンドで大ヒットし、2025年ローレンス・オリヴィエ賞で三冠を受賞した話題作『オイディプス』が、ブロードウェイへと到達した。 これは、ソフォクレスの古典悲劇をロバート・アイクが現代の政治スリラーとして再構築した舞台である。選挙戦の最終夜を舞台に、権力、運命、そして隠された真実がリアルタイムで交錯し、息詰まる緊張の中で物語が展開する。
2024年にウエストエンドで高評価を得、2025年にブロードウェイにやって来たロマンティック・コメディ・ミュージカルである。 主人公はイギリスの母子家庭に育った明るくややおめでたい位の20代半ばの青年 ダグル。彼は会ったことのない父の再婚式 に招待され、初めてニューヨークを訪れる。空港へ迎えに来るのは、新婦の妹でニューヨーク育ちの ロビンだ。 ブロードウェイには珍しくたった二人のキャストによるミュージカルだが、その分、二人の会話と距離感が濃密に描かれている。偶然の出会いとケーキが導く24時間が、軽やかなロマンスと孤独・つながりといったテーマと交錯し、幅広い観客に届く内容となっている。
フロリダに「アメリカ版ヴェルサイユ宮殿」を建てようと、莫大な資産をつぎ込んで一躍有名になったジャッキー・シーゲルの半生を描いたミュージカル・コメディ。同名のドキュメンタリー映画を基にしているが、舞台で主人公ジャッキーを演じるのはトニー賞受賞者のクリスティン・チェノウェス。ニューヨークの熱心なファンらの期待に応える存在感あるパフォーマンスが見られる。 演出は『春のめざめ』でトニー賞にノミネートされたマイケル・アーデン。その後『パレード』『ワンス・オン・ディス・アイランド』ではトニー賞を受賞した「再解釈の名手」でもある。
1914年のサラエボ事件――第一次世界大戦の引き金となった大公暗殺を、風刺とブラックユーモアで再解釈した戯曲である。2017年の世界初演から、その鋭い筆致と不穏な笑いが高い評価を受けてきたが、2025年のオフ・ブロードウェイのリバイバルでは、さらに現代の若者疎外とポピュリズムの危険を鋭く映し出している。 トニー賞ノミネート俳優のパトリック・ペイジ (Patrick Page) と、クリスティン・ニールセン (Kristine Nielsen)の演技が、舞台全体に深みと重さを与えている。
『ラグタイム(Ragtime)』は、1998年に初演された、アメリカを壮大なスケールで描いたブロードウェイを代表するミュージカルである。2年間にわたって上演され、トニー賞13部門にノミネート、うち4部門を受賞した。豊かでシンフォニックな音楽とともに、人種・階級・移民というテーマを通して「アメリカン・ドリーム」の光と影を浮かび上がらせた作品である。今回のリンカーン・センター版では、28名編成のオーケストラによる重厚なサウンドが劇場を満たし、作品全体のスケールをさらに拡張した見がいのある作品になっている。 原作は、ニューヨーク・ブロンクス生まれのユダヤ系アメリカ人作家E・L・ドクトロウ(E. L. Doctorow, 1931–2015)の小説『ラグタイム』(1975)。作曲はスティーヴン・フラハティ(Stephen Flaherty)で、オープニングナンバーの「ラグタイム」、そして「夢の車...[Read More]
『ロミーとミッシェルの場合』の邦題で知られる映画のミュージカル版が、地方での初演から8年の時を経てオフ・ブロードウェイに上陸。 タイムズスクエアからほど近い42丁目にある、客席数499の比較的大きな劇場Stage 42での挑戦に期待が寄せられた。
今年のニューヨーク演劇界で注目を集めているのはミュージカル『オペラ座の怪人』の2年ぶりの復活。 没入型の作品として生まれ変わり、タイトルも『マスカレード(仮面舞踏会)』と改められたリバイバルが、オフ・ブロードウェイで連日ソールドアウトの快進撃を続けている。