Broadway Square

Buena Vista Social Clubブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ

1996年、アメリカのギタリストがキューバの老巧なミュージシャン19名たちを再結集させて、古き良き時代のキューバ楽曲を録音した。そのアルバムは大ヒットして関係者達を驚かせただけでなく、翌年には更にグラミー賞に輝いた。それまでは無名だったキューバ音楽界のベテランたちの才能を世界に知らしめたそのアルバムの名は、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』。3年後には、ドイツの有名なプロデューサー、ヴィム・ヴェンダース監督によってそのレコーディングの秘話と共に、ミュージシャンらのインタビューやその後の活躍に迫ったドキュメンタリー映画も制作された。これらの2作品は、キューバの伝統的なサルサやソン音楽に新たな息吹をもたらし、それらの楽曲を不朽のものとした。その二つを基に制作されたのが、この新感覚のジュークボックス・ミュージカルだ。

Hell’s Kitchen ヘルズ・キッチン

今シーズンになって、制作費が2千万ドル超の2作品のミュージカル『ワンス・アポン・ア・ワン・モア・タイム』と『ヒア・ライズ・ラブ』が、相次いで開き、そして短命に終わった。そんな劇場街において、先日オフ・ブロードウェイで大絶賛の中で上演を終えたのが、ミュージカル『ヘルズ・キッチン』だ。グラミー賞に15回受賞、アルバムのセールスは6500万枚に及ぶ世界的歌姫アリシア・キーズによる作詞作曲のジュークボックス・ミュージカルで、開演前から大きな注目を浴びていた。

How to Dance in Ohioハウ・トゥ・ダンス・イン・オハイオ

2023年12月10日にブロードウェイで開幕したミュージカル『ハウ・トゥ・ダンス・イン・オハイオ』は、これまでにない自閉症という題材と向き合い、多くのブロードウェイで初めての取り組みを行ったという点で、注目を集めた。原作は、2015年に公開された同名のドキュメンタリー映画『ハウ・トゥ・ダンス・イン・オハイオ』だ。オハイオ州のコロンバス市にある私設の精神カウンセリングセンターを舞台にし、そこに通う自閉スペクトラム症の人々に焦点を当てている。

Jaja’s African Hair Braidingジャジャのアフリカ三つ編み

ガーナ系アメリカ人劇作家ジョセリン・ビオのコメディータッチの新作で、以前このブログにも書いたオフの戯曲『Our Dear Dead Drug Lord』を担当したホイットニー・ホワイトが演出している。劇場に入ると、あらゆるアフリカのブレイディング(三つ編み)のスタイルが舞台幕に描かれているのが目に飛び込んでくる。これは髪を根本から細かい三つ編みにしていく黒人特有のスタイルで、隣に座る黒人女性二人も、早速「あのスタイル、やったことある!」とか「このスタイルはいいよね~」と話し込んでいた。

Back To The Future バック・トゥ・ザ・フューチャー

1985年の大ヒット映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の舞台化だけあって、オープンした最初の7日間に12万ドルを越える収益を上げた。また、初日一週間前に先だって行われた特別公演では、映画、舞台の両方で脚本や監督など大役を担っていたボブ・ゲイル、ロバート・ゼメキスといった大物が、舞台俳優たちと供にカーテン・コールに参加。その上、映画で科学者を演じたクリストファー・ロイドやマーティーの母親役のリア・トンプソンが登場したばかりか、観客席にはマイケル ・J・フォックスが来ていて、立ち上がってその姿を見せてくれた。当然、おおいに観客が沸いたオープニングとなった(映像添付)。

Melissa Etheridge:My Window メリッサ・エスリッジ: マイ・ウインドウ

メリッサ・エスリッジはグラミー賞(1993年、95年)とアカデミー賞(2007年)を受賞するという輝かしいキャリアを持つロックスターであり、Time誌による「世界でもっとも影響力のある100人」の1人に選ばれるなど、今や社会面での功績も高く評価されている。彼女が生まれてから現在までの人生を自身で語りながら、その時々のヒット曲を歌うこの作品は、2022年オフ・ブロードウェイで成功した後、今回9週間限定でブロードウェイにやってきた。  

Purlie Victorious: A Non-Confederate Romp Through the Cotton Patchパーリー・ビクトリアス〜(直訳)南軍ではない者が小さい綿農家をはしゃいで進む〜

説教を美しく語るのが得意な黒人伝道師が、故郷ジョージア州の田舎の教会を買い取ろうと繰り広げる騒動を描いたコメディー作品。1961年に初演されたこの戯曲は、ケネディ・センター栄誉賞を受けた俳優、演出家、そして公民権運動の活動家であった故オジー・デイヴィスによるもので、彼が当時主役を演じた。スパイク・リーに尊敬され、彼の映画作品に数多く出演して名が知られるようになったデイヴィスだが、この作品は初演以来、初めてのブロードウェイ再演となる。ちなみに初演の2年後には『Gone Are the Days!』(直訳:過ぎ去った日々)という題名で映画化もされている。

The Shark is Broken サメが壊れた

先頃巨大ザメの映画「MEG2」が公開されたが、この手の作品は皆、多かれ少なかれスティーヴン・スピルバーグ監督による1975年の名作映画『JAWS/ジョーズ』の影響を受けていると言っていい。その『JAWS/ジョーズ』の撮影現場の様子をコメディータッチで描いた戯曲が『サメが壊れた』だ。

Once Upon a One More time ワンス・アポン・ア・ワンモア・タイム

ポップのプリンセスとも呼ばれるブリトニー・スピアーズのヒット曲22曲が散りばめられた本作品は、よくある伝記風のジュークボックス・ミュージカルではない。タイトルが匂わせている通り、お伽噺のシンデレラや白雪姫、眠れる森の美女など、おなじみの主人公が6人も出てくるブリトニーとは関係のない話に仕立てられている。お伽噺の語り始めによく使われる「Once Upon A Time(昔昔、〜)」をブリトニーのヒット曲「Baby, One More Time」と合わせて語感も良く、シャレたタイトルとなっている

2023年 トニー賞に向けて

5月2日、トニー賞各賞のノミネートが発表された。だが他方、その日の朝から始まっていたのが放送作家達のストライキだった。テレビ、ラジオ、映画、ネットなどのすべての作家達が参加している。米国の組合(ユニオン)は日本と違い、職種別に組織されているのがほとんどなので、この人たちがストライキを始めたことで授賞式も一時延期となった。放送する四大ネットワークに流す映像を組み立てるCBSのライターも、ユニオン会員だからだ。 授賞式では放送中ミュージカルのノミネート作品らのハイライト・シーンが生で披露される。これは全米にいるブロードウェイ・ファンにとっては堪らないし、プロデューサー等にとってもまたと無い宣伝となる。もちろんそこで優勝を勝ちとれれば万々歳だ。したがってブロードウェイのプロデューサー達にとっては、放送されないトニー賞の授賞式など考えられないので、これには焦ったと思う。 授賞式の目玉は、最後に勝者...[Read More]

Sweeney Todd: THE DEMON BARBER OF FLEET STREET スウィーニー・トッド〜フリート街の悪魔の理髪師〜

無実の罪を着せられて家族を奪われた男が、恨みと復讐の念から狂気にはしり、殺人を繰り返すのがこの作品『Sweeney Todd スウィーニー・トッド』だ。ブロードウェイ・ミュージカルとしては珍しく血生臭い。随分前になるがティム・バートンが映画化し、ジョニー・デップがアカデミー賞主演男優にノミネートされて有名だが、元々は1979年、故ソンドハイムが60歳の時にブロードウェイ公演して、8部門でトニー賞を獲得したミュージカルの名作だ。今回が3度目のリバイバルとなるが、1番の注目は主演のジョッシュ・グローバン(Josh Grovan)だろう。

Shucked シャックト

作詞家アラン・ジェイ・ラーナーと作曲家フレデリック・ロウは、『マイ・フェア・レディ』や『恋の手ほどき』などを制作した名コンビ。18年間に7つのミュージカルを作り、彼等が逝って久しい今でも「ラーナー&ロウ」と親しみを込めて呼ばれている。その彼らが、アーサー王の伝説を元に書かれたT.H.ホワイトの「永遠の王」にひらめきを感じ、制作したのが『キャメロット』だ。『マイ・フェア・レディ』の大成功から4年を経た1960年、ジュリー・アンドリュースとリチャード・バートンの豪華キャストでブロードウェイで初演されたのがオリジナルとなる。トニー賞を4部門で受賞し、2年半公演され続けた真の正統派伝統ミュージカルである。が、今回の脚本は、映画『ア・フュー・グッドメン (A Few Good Men)』やテレビ・シリーズ『ザ・ホワイトハウス (The West Wing)』などを書いたアーロン・ソーキンが、現代風に...[Read More]

Lost Password