2017年秋オフ・ブロードウェイで演じられ、奇抜さとエッジの効きで評判をさらった『KPOP』が本作品の元となっている。当時その高評価を梃子(てこ)に、地方公演を経てオン・ブロードウェイへ進出する予定だったのが、時期が悪く、コロナ禍で停滞を余儀なくされていた。ところが昨今のコロナの鎮静化を受け、2022年11月からブロードウェイでの公演が始まった。作品名のKPOPは、日本ではK-POPとして呼び倣われていて、ダンスと歌謡がミックスされた韓国ポップ界の1ジャンルのことを指している(Korean Pop)。世界的にはBTSやブラック・ピンクといったグループが有名だが、今回のミュージカル『KPOP』は切符の売れ行きが伸びず、プレビュー後二週間をちょっと過ぎた公演17回目にあたる12月11日には、早々に閉演となった。
多くの劇評家から絶賛された作品が、先月11月にブロードウェイでオープンした。NYタイムズ紙は「劇評家の推奨作品」と書き、タイムアウト誌は「2021年の新作ミュージカルで一番の作品だ」と褒め称えた。本作品『キンバリー・アキンボ』は、おそらく次回のトニー賞に名前が挙がるだろう。そんなわけで、かつてこのブログのオフ・セクションで紹介してはいるが、再度紹介したい。
クリスマスが近いニューヨーク・ブルックリンにある小さなクラブの壁棚には、様々な洋酒が弱い光に照らされている。色とりどりのラベルが旨さを主張している前のバーには、デ゙ィビッド・ザヤスが演じる40代後半とおぼしいエディが腰かけている。そして彼は、そこにはいない誰かに静かに語りかけている。ニュージャーシー州に住むトラック運転手のエディは、飲酒運転による免許失効中で特にやることがないらしい。そんな彼がバーにいるのにはある事情があるようだ。先日あまりの寂しさから亡くなった妻宛にメールを送ったところ、なんと「XXXのバーで会おう」という返信が返ってきたのだ。彼はアドレスが誰かの手に渡ったのだろうと考えながらも、ひょっとしたらファンタジードラマのような奇蹟が自分にも起こるかも知れないと微かに思ってやって来たのだ。だがやはり現実は現実。いくら待っていても誰も現れなかった。
2000年にアカデミーを受賞した映画「『あの頃ペニー・レインと』を記憶されている方も多いだろう。この作品にはツエッペリンやスティービー・ワンダーの曲がそこここに使われていて、当時多くの若者が魅了された。きわだったストーリーはなく、監督したキャメロン・クロウが15歳だった頃の経験を散文的に綴った半自叙伝だった。あれから20年。今彼は、随筆、小説、プロデューサー、演出、俳優、作詞、脚本など多くの分野で活躍し、成功を納めている。そのキャメロン・クロウが同作品の脚本、作詞を手掛けたのが今回の舞台だ。当然多くの映画ファンの期待が集まる中、この10月にオープンした。
1969年にトニー賞最優秀作品賞を受賞して映画化されたこの作品は、1776年にフィラデルフィアで行われた各植民地(当時は13州だった)代表による大陸会議の様子を描いたミュージカルだ。事実を元にしたフィクションで、台詞や歌詞は実際の会議のメンバーの手紙や記録から取ってきたものもあると言う。主人公は、当時イギリスの圧政からアメリカを解放しなければならないと考えたジョン・アダムス。正直で弁舌が苦手なため、多くの人の前で話すことを嫌い、他の議員からの評判が悪かった。そこで説得力のある弁舌家ベンジャミン・フランクリンと、文書力の優れたトーマス・ジェファーソンと組む。最初はイギリスとの決別という無謀なアイデアに反対する議員は多かった。しかし3人は独立宣言の原案を元に、大陸会議のメンバーと文書を推敲しながら、皆の承認が得られるまで説得と書き換えを繰り返し、最終的には全員一致で独立を宣言するまでに辿り着く...[Read More]
このアメリカ人脚本家グレーシー・ガードナーGRACIE GARDNERはブルックリン生まれで、まだ若いが多くの小さな賞を受けており将来有望と言われている。 劇に登場するのは、皮膚癌専門の医師と、研修医1人。および6、7人の患者らとなる。そして舞台は、医師が運営する医療クリニックの待合室となっている。
人気小説家のジョディ・ピコーと当時まだティーンエイジャーだった娘のサマンサ・バン・リアーが、青少年を対象に書いた小説を原作としてミュージカルに仕立て上げたのが本作品となる(題名は同じ)。脚本を手掛けたのは子供向けの話を舞台化することで腕を奮ってきたチモシー・アレン・マクドナルド。監督はデズニーのミュージカル『ニュージーズ』でトニー賞を受けたジェフ・カルホーン。作詞・作曲は、やはりデズニーのアニメの曲を多く制作しているアリサ・サムセルとケイト・アンダーソンのコンビ。そして主役のアリエル・ジェイコブスもまた、デズニーの『アラジン』で王女を演じている。オフにしては10人もの俳優が出演する、ちょっと豪華なデズニー調ミュージカル作品になっているのも、この顔ぶれならば納得がいく。
2013年にベスト・ミュージカルも含めて6部門で受賞したミュージカル『キンキー・ブーツ』が、8月にオフ・ブロードウェイでスタートした。シンディー・ローパーの作詞作曲、ハーヴェイ・ファイアスタインの脚本になる。オンでは6年間約2500回以上の公演を続けたうえ世界ツアーも行い、日本では故三浦春馬がローラ役を演じて評判になった大作品だ。オンでは何回も観ていたので懐かしく、また今回、ロンドンのウェストエンドでローラ役を演じて高評価だったカルム・フランシスがそのまま主演とのことで、期待に胸を膨らませて足を運んだ。
1863年、南北戦争が激しくなった頃の話である。ニューヨークのファイブ・ポイントと呼ばれていた地区は、アイルランドからの移民と南部からの黒人が住む、貧しいながらも活気溢れるスラム街だった。そこに毎夜人々が集まって賑わう、ダンスホール(売春宿)を併設するバーがあった。その名はパラダイス・スクエア。経営するのは祖父が奴隷だったネリーと、アイルランド移民の夫ウィリーだった。しかし夫ウィリーは北軍に志願して出征。残されたネリーは1人で店を仕切っていた。ある日その店にウィリーの甥がアイルランドからやってくる。彼は無類のダンス好きなのだが、奇遇にもちょうどその日、ダンスが得意な南部の若人が奴隷生活から逃れてやって来る。
映画『Xメンシリーズ』のウルヴァリン役や、『グレイテスト・ショーマン』で アメリカだけならず日本でもファンの多いヒュー・ジャックマンが、ブロードウェイに戻ってきて話題になっている。彼が演ずるのはこのミュージカル『The Music Man』の詐欺師、ハロルド・ヒルだ。ハロルドは、アイオワ州の田舎町リバーシティにやってきて、町の少年少女たちだけで音楽隊を結成する、と約束し、その魅力的な外見とエネルギッシュな話術で、楽器やユニフォームを両親に売りつけようとたくらんでいるのだった。
テレビのコメディードラマ「Will and Grace 邦題:ふたりは友達?ウィル&グレイス」でエミー賞を始め、多くの賞を受けた女優デブラ・メッシングが主演。ある女性の思春期から107歳(長生き!)になるまでの90年間を、17歳の誕生日、41歳の誕生日、70歳の誕生日・・・という具合に、節目節目の様子を見せることで、その人生を濃縮して 描き出している。
ニューヨーク州知事が昨年(2021年)5月にブロードウェイの閉鎖解除を発表した。それを受け、直後にコンサート形式のブルース・スプリングスティーンのショーが復活。8月には演劇の新作『パスオーバー』が開演。そして9月、待望のブロードウェイの花形、ミュージカル群が約18ヶ月ぶりに開幕を果たした。 この時を待っていた大勢のミュージカル・ファンが詰めかけ、当初はどの作品も好調なスタートだった。ところが感謝祭、クリスマス、お正月と続く稼ぎ時にオミクロン株が上陸。観客は減り、2022年の1月9日の週には約60%しか座席が埋まらず、9つのショーが早期終演を余儀なくされた。運が悪いとしか言いようがない。 3月にはブロードウェイ劇場41軒中、半分にも満たない19軒だけがオープンしていると言う有様だったが、それでも劇場間での競争が減ったことが幸いし、92%の席が埋まっていた日もあるなど、有名作品の収益は相応なレ...[Read More]