異なった環境で生活してきた全く違う性格の二人の中年女性が、オハイオ州の田舎でルームメートとなるところから物語は始まる。彼らの似ているのは、今までの生き方を変えたいと願っているところだ。二人の人生が、そのとある一軒家で交差し、やがて離れていく。その居間で繰りひろげられる大女優二人の演技を、1時間40分間、じっくりと観ていただきたい。
大ヒットした映画『バービー』でタイトルロールを演じたハリウッド女優のマーゴット・ロビーが惚れ込み、プロデューサーとして名乗りを挙げたことで初演が実現したのがミュージカル『ビッグ・ゲイ・ジャンボリー』。“ゲイの大祭典”などと訳せるタイトルからも自ずと察しがつくように、徹底して笑いを提供することに拘ったオフ・ブロードウェイで注目されている新作だ。
2024年の夏のニューヨーク演劇界でチケット入手に困難を極めたのが、オフ・ブロードウェイで上演されたミュージカル『キャッツ:ジェリクル舞踏会』。猫たちが都会のゴミ捨て場に集い、天上へ昇ることを許される1匹を選ぶという内容のお馴染みのミュージカル『キャッツ』を、新たな視点で見つめ直したリバイバルだ。
未だ10代だったS.E.ヒントンが、自身の住むオクラホマ州タルサを舞台に書いた小説 『アウトサイダー』は、当時同世代の若者の間で絶大な支持を得た。かれこれ60年ほど前の話だ。その後1983年にF・コッポラ監督で映画化され、後に有名になる多くの若手俳優がそこでデビューを果たした。そしてこの4月、アンジェリーナ・ジョリーがエグゼクティブ・プロデューサーとなって、ブロードウェイでオープンした。どうやら彼女の15歳になる娘がサンディエゴの大学内でこの作品の試験公演を観て、アンジーに勧めたらしい。このS.E. ヒントンの小説を元とした作品は、若者たちの大人社会に対するいらだちと反発や、それを解消できずに相手ばかりか自分の心や体も傷つけてしまう若者達を描いている。彼等が直面する様々な問題を描くアメリカ青春文学の流れを汲む作品の一つだ。
ヨーロッパのファシズムが拡大し、世界が混沌としていった時代を生き抜いた女性肖像画家の一生を描いたミュージカル。その主人公、タマラ・ド・レンピッカの名は知られていない。しかしその絵には見覚えがある筈。ロシアで何一つ不自由なく生活していたレンピッカはある時、突然難民となる。しかし貧しい暮らしの中で創作活動を始め、やがて芸術界のスターへと昇りつめていく。ユダヤ系ポーランド人の彼女が描く数々の肖像画は、浮き沈みを繰り返しながら現在も人気を博している。本ミュージカルのレンピッカは、『ウィキッド』のエルファバ役や『レント』のモーリン・ジョンソン役で絶賛された、ブロードウェイでは未だそんな歳ではないが重鎮と呼びたくなる存在のエデン・エスピノーサが演じている。他方、彼女が心を寄せる娼婦をアンバー・アイマンが。レンピッカのパトロンの妻をベス・レベルが演じる。彼女達の美しいソロの数々は、きっと感動を呼び起こす...[Read More]
2023年~2024年シーズン後半のオフ・ブロードウェイでサプライズな大ヒットとなったのが、台詞が一切ないダンス・ミュージカル『イリノイズ』。シンガーソングライターのスフィアン・スティーヴンスが2005年に発表した、イリノイ州に焦点を当てたコンセプト・アルバム(邦題:「イリノイ」)に収録された楽曲を下敷きに、それらに合わせて物語を創作したジュークボックス・ミュージカルとなる。
ベストセラーとなった歴史長編小説「WATER FOR ELEPHANTS(邦題:サーカス象に水を)」の新作ミュージカルがブロードウェイで始まった。サラ・グルーエンによるこの小説は2006年に出版され、2011年には映画「恋人たちのパレード」にもなっている。時代は1931年、世界大恐慌の真っ最中。事故で両親を亡くして無一文となった青年ジェイコブが、行き先も定まらないまま列車に飛び乗り、そこで出会ったサーカスのメンバーと新たな人生を歩み始める。演出は昨年、『キンバリー・アキンボ』〔https://broadwaysquare.jp/kimberly-akimbo-2/〕でトニー/ミュージカル作品賞のトロフィーを手にしたジェシカ・ストーンだ。ちなみにこの作品の制作費は記録破の2500万ドルかかっていると言う。
19世紀末から20世紀初頭にかけて実在した強盗エルマー・マッカーディのわずか30年ほどの一生と、死後ミイラとなって過ごした66年間が描かれている。舞台は、ステージの3分の1ほどの大きさの台に7人のバンドマンが乗り込み、フォーク・ロックを演奏する。作曲家デビット・ヤズベック、劇作家イタマール・モーゼス、演出家デビッド・クローマーという最強チームが、トニー賞を総なめにした2018年の『The Band’s Visit』に続いて再結集して送り出す作品だ。ナレーションを担う男優ジェブ・ブラウンは、ボーカルを担当したうえで強盗団のボスにも扮する。他のキャストもステージでマイクを握って歌ったり踊ったり。新たな趣向で面白い。全体がコメディーに溢れていながら哀愁にも満ちた秀作。
戯曲『人形の家』で有名なノルウェーの作家ヘンリック・イプセンの同名作品をエイミー・ヘルツォークが脚色したリバイバルとなる。原作は1883年にノルウェーで初演されて以来、世界中で何度も上演され、ブロードウェイでは11回目だ。今回は、テレビドラマの大ヒットシリーズ『メディア王 〜華麗なる一族〜』の主役を4シーズン務めて世界的名声を博したジェレミー・ストロングが主演している。ノルウェーの辺境にある小さな町の医師が、倫理感の為に心ならずもそこの町民と戦うことになる姿を描いている。演出は、エイミー・ヘルツォークの夫であり、トニー賞受賞者でもあるサム・ゴールドが担っている。 心の深淵に響く、見応えのある作品だ。
ピューリッツァー賞とトニー賞を受賞しているニューヨーク生まれの劇作家、ジョン・パトリック・シャンリーが脚本と演出を担った悲喜劇『ブルックリン・ランドリー』。異性運がなかった男女が、人生の大波に呑まれながらも様々な絆を大切にする様子を、丁寧に描いている。主演女優は『サタデー・ナイト・ライブ』で10年以上、いろいろな役をこなしてきたセシリー・ストロングで、今回は簡素で二面性のないフラン役を、好感の持てる演技で魅せてくれる。相手役のオーウェンは、ピューリッツァー賞を受賞した『Cost of Living』(https://broadwaysquare.jp/appropriate/)で主演したデヴィッド・ザヤス。彼はこの作品でトニー賞にノミネートされている。粗野でありながら温かみが感じられる男優で、人との触れ合いを渇望しながらも楽観的でいられる、寂しい中年男を演じると天下逸品だ。
ピューリッツァー賞とトニー賞を受賞した『ダウト』が、20年ぶりにブロードウェイに帰って来た。『ダウト』は劇作家ジョン・パトリック・シャンリーの名作。2008年にメリル・ストリープ主演で映画化され、アカデミー賞最優秀脚色賞を含めた5部門でノミネートされている。1964年、ニューヨーク市ブロンクスの労働者階級が多い地域のカトリック校が舞台。そこの修道女である校長と、併設する教会の神父が描かれる。厳格な校長は、信者や生徒にフレンドリーな神父を児童性愛者ではないかと疑い、何とかしなければならないと決意する。
主演女優ケリー・オハラは、ミュージカル『王様と私』でトニー賞を受賞。2019年には来日も果している。その彼女が今回はアル中の女を演じるというので、今NYCでは、この話題で盛り上がっている。演題の「Days of Wine and Roses」は、ジャズのスタンダードナンバーとして有名だが、元は1958年、 J.P.ミラーの脚本によるテレビドラマで、その後1962年にジャック・レモンが主演して映画化。大ヒットした。今回のミュージカルは、このテレビドラマと映画を組み合わせてミュージカルに仕立てられている。