1966年のデビューから今世紀初頭にかけて多くのヒット曲を生み出したニール・ダイアモンドの伝記ミュージカルである。1億3千万枚という記録的なレコード売上枚数を誇り、ビルボードのコンテンポラリー・チャート部門ベスト10入りが38曲、ソングライターとして名誉殿堂入り、ケネディーセンター名誉賞、グラミー賞特別功労賞生涯業績賞など数々の賞を受賞したアーティストだ。演目名『A Beautiful Noise』は、1976年のアルバム「Beautiful Noise」からとっている。
前衛写真家ラリー・サルタンは、週末に実家を訪れ、老いてゆく両親を何年にもわたって撮り続けた。そして1989年、短い文章をその写真に添えて、子供の頃の家族の八ミリ映像と一緒にMOMA(ニューヨーク近代美術館)で個展を開く。その展覧会は評判となり、そこを出発点に彼の名は知られて行くようになる。既に彼は亡くなっているが、今でも世界中に多くのファンがいる。
ミュージカル界の巨匠ソンドハイムの『Merrily We Roll Along』(愉快に転がろう)は、不思議な歌の魅力なのだろうか、何度もリバイバルされてきた。しかしその度に失敗を繰り返し、彼の作品中一番の失敗作と言われてきた。なぜ不評だったのか、なぞ解きをするドキュメンタリーまで制作されたほどだ。ところが今回(2022年秋)のオフ・ブロードウェイ・バージョンは、切符が全く手に入らないほどの評判となった。脚本はジョージ・ファース。彼の書いたソンドハイムのミュージカル『カンパニー』は、昨年(2022年)、トニー賞を受賞している。
『Some Like It Hot (お熱いのがお好き)』は半世紀以上前にビリー・ワイルダーが監督したアメリカのコメディ映画だが、今回の舞台は、その2度目のミュージカルとなる。映画でマリリン・モンローが演じたヒロイン、シュガー役を、今回のミュ-ジカルでは黒人女優アドリアナ・ヒックスが演じている。彼女は2021年のブロードウェイのミュージカル『SIX』で6人の王妃のうちの一人を演じ、また2016年の『カラー・パープル』ではセリー役を演じている。が、ブロードウェイで一人ヒロインとなるのは今回が初めてだ。脚本はマスユー・ローペズとアンバー・ラフィン。映画とは全く違った味わいとなっている。
シェークスピアの4大悲劇の1つ「ロミオとジュリエット」のお話で、もしジュリエットがあのストーリーの中で「ロミオが死んでも自分は死なない」という決断をしていたらどうなっていたか、を今の時代背景に沿ってフェミニズム的視点から描く新作のコメディー・ミュージカルだ。ジューク・ボックス・スタイルで、スウェーデン人のソング・ライターマックス・マーティンによるヒット曲によってストーリーが展開していく。 マックス・マーティンはブリトニー・スピアーズやセリーヌ・ディオンなどの多くのアーティストのヒット曲を出し、アメリカのシングル版ヒットチャートの1位に載った回数がポール・マッカートニーやジョン・レノンに続く2位という大物だ。 マーティン氏が同作品のプロデューサーでもあるだけあって、全ての曲がピッタリと絶妙にストーリーに嵌っていてデューク・ボックス・スタイルにありがちのチグハグ感が全くない。私は多くの20...[Read More]
2017年秋オフ・ブロードウェイで演じられ、奇抜さとエッジの効きで評判をさらった『KPOP』が本作品の元となっている。当時その高評価を梃子(てこ)に、地方公演を経てオン・ブロードウェイへ進出する予定だったのが、時期が悪く、コロナ禍で停滞を余儀なくされていた。ところが昨今のコロナの鎮静化を受け、2022年11月からブロードウェイでの公演が始まった。作品名のKPOPは、日本ではK-POPとして呼び倣われていて、ダンスと歌謡がミックスされた韓国ポップ界の1ジャンルのことを指している(Korean Pop)。世界的にはBTSやブラック・ピンクといったグループが有名だが、今回のミュージカル『KPOP』は切符の売れ行きが伸びず、プレビュー後二週間をちょっと過ぎた公演17回目にあたる12月11日には、早々に閉演となった。
多くの劇評家から絶賛された作品が、先月11月にブロードウェイでオープンした。NYタイムズ紙は「劇評家の推奨作品」と書き、タイムアウト誌は「2021年の新作ミュージカルで一番の作品だ」と褒め称えた。本作品『キンバリー・アキンボ』は、おそらく次回のトニー賞に名前が挙がるだろう。そんなわけで、かつてこのブログのオフ・セクションで紹介してはいるが、再度紹介したい。
クリスマスが近いニューヨーク・ブルックリンにある小さなクラブの壁棚には、様々な洋酒が弱い光に照らされている。色とりどりのラベルが旨さを主張している前のバーには、デ゙ィビッド・ザヤスが演じる40代後半とおぼしいエディが腰かけている。そして彼は、そこにはいない誰かに静かに語りかけている。ニュージャーシー州に住むトラック運転手のエディは、飲酒運転による免許失効中で特にやることがないらしい。そんな彼がバーにいるのにはある事情があるようだ。先日あまりの寂しさから亡くなった妻宛にメールを送ったところ、なんと「XXXのバーで会おう」という返信が返ってきたのだ。彼はアドレスが誰かの手に渡ったのだろうと考えながらも、ひょっとしたらファンタジードラマのような奇蹟が自分にも起こるかも知れないと微かに思ってやって来たのだ。だがやはり現実は現実。いくら待っていても誰も現れなかった。
2000年にアカデミーを受賞した映画「『あの頃ペニー・レインと』を記憶されている方も多いだろう。この作品にはツエッペリンやスティービー・ワンダーの曲がそこここに使われていて、当時多くの若者が魅了された。きわだったストーリーはなく、監督したキャメロン・クロウが15歳だった頃の経験を散文的に綴った半自叙伝だった。あれから20年。今彼は、随筆、小説、プロデューサー、演出、俳優、作詞、脚本など多くの分野で活躍し、成功を納めている。そのキャメロン・クロウが同作品の脚本、作詞を手掛けたのが今回の舞台だ。当然多くの映画ファンの期待が集まる中、この10月にオープンした。
1969年にトニー賞最優秀作品賞を受賞して映画化されたこの作品は、1776年にフィラデルフィアで行われた各植民地(当時は13州だった)代表による大陸会議の様子を描いたミュージカルだ。事実を元にしたフィクションで、台詞や歌詞は実際の会議のメンバーの手紙や記録から取ってきたものもあると言う。主人公は、当時イギリスの圧政からアメリカを解放しなければならないと考えたジョン・アダムス。正直で弁舌が苦手なため、多くの人の前で話すことを嫌い、他の議員からの評判が悪かった。そこで説得力のある弁舌家ベンジャミン・フランクリンと、文書力の優れたトーマス・ジェファーソンと組む。最初はイギリスとの決別という無謀なアイデアに反対する議員は多かった。しかし3人は独立宣言の原案を元に、大陸会議のメンバーと文書を推敲しながら、皆の承認が得られるまで説得と書き換えを繰り返し、最終的には全員一致で独立を宣言するまでに辿り着く...[Read More]
このアメリカ人脚本家グレーシー・ガードナーGRACIE GARDNERはブルックリン生まれで、まだ若いが多くの小さな賞を受けており将来有望と言われている。 劇に登場するのは、皮膚癌専門の医師と、研修医1人。および6、7人の患者らとなる。そして舞台は、医師が運営する医療クリニックの待合室となっている。
人気小説家のジョディ・ピコーと当時まだティーンエイジャーだった娘のサマンサ・バン・リアーが、青少年を対象に書いた小説を原作としてミュージカルに仕立て上げたのが本作品となる(題名は同じ)。脚本を手掛けたのは子供向けの話を舞台化することで腕を奮ってきたチモシー・アレン・マクドナルド。監督はデズニーのミュージカル『ニュージーズ』でトニー賞を受けたジェフ・カルホーン。作詞・作曲は、やはりデズニーのアニメの曲を多く制作しているアリサ・サムセルとケイト・アンダーソンのコンビ。そして主役のアリエル・ジェイコブスもまた、デズニーの『アラジン』で王女を演じている。オフにしては10人もの俳優が出演する、ちょっと豪華なデズニー調ミュージカル作品になっているのも、この顔ぶれならば納得がいく。